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民医連新聞

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在宅酸素療法“負担10倍”/ 経済的理由で酸素吸入装置“とりはずし”急増

 老人医療の1割負担が実施され、在宅酸素療法を受けている患者さんの負担金がふえ、診療所では10倍以上にもふくれあがりました。大阪民医 連の事業所が調査したところ酸素濃縮器を経済的理由で取り外す患者が急増。群馬・前橋協立診療所からは、「負担が重い」と酸素を一時中断した患者さんが1 週間後「酸素がないと苦しい」と再開したケースが報告されました。患者団体も怒りの声をあげています。

(小林裕子記者)

 群馬県前橋市城東町。「この地域は市内でも高齢化率が高く、高齢者世帯や老老介護も多いです」と、前橋協立診療 所医事課の阿部裕美さんが案内してくれたのは佐藤五一さん(86)宅。 2年前から在宅酸素療法を受けている佐藤さんは「高くなったね」と一言。入院中の お母さん(1〇4)と夫婦、高齢者3人の世帯です。お見舞いから帰宅した奥さんも「一回に8000円以上も支払うのでびっくり。年金だけの暮らしだか ら…」と声を落とします。
 看護師長の草木百代さんは「年金の3万円、4万円でつつましく暮らしている高齢者が、医療費の1万円近く捻出するのはとてもたいへんなはず。しかも在宅 酸素療法は言ってみれば息を吸うための補助です」と憤ります。「制度が変わっただけで10倍の負担ですから」。
 同診では、4月、10月と改悪のたびに「申し訳ない思い」で患者さんにお知らせ。11人いる在宅酸素の患者さんにも事前に通知しました。しかし10倍も の支払いが実際に始まるとショックを隠せない患者さんも。職員も患者さん一人ひとりの生活の実情が分かるだけに「辛い」。
 「何とかならないか」と事務長の金子徹さんは模索しました。在宅酸素療法の患者さんの身障手帳の取得はどうか。しかし「呼吸器疾患の障害認定は3級と1 級のみです。2級が無いことがまずおかしい。1級になるのは難しく、3級では前橋市の場合は何の助成もありません。3級の障害認定に特例を設けて、医療費 を助成する手だてが必要。国の責任ですべきですよ」。前橋市社保協の事務局長でもある金子さんは「今度の対市交渉に向けても、制度を提案して要求したい」 と言います。
 所長の伊藤洋子医師は「在宅酸素療法によって、息苦しさがとれ、食欲が出るなど状態が良くなってきます。自己負担を軽くするために、身障の認定を考えま す。しかし患者には検査のために相当の負荷をかけなければならないことも問題です。酸素の吸入を一時中断して酸素分圧が下がった状態の動脈血を採取するに は、危険も伴います。肺活量一秒率の検査も苦しい。救急が待機した状態で行う必要がある。そんな負荷をかけずとも、そもそも在宅酸素療法を開始するときに は医学的な基準によって導入しているのだから、この療法を実施している事実を持って認定することが必要」と言います。「治癒して酸素療法から離脱すること は無いに等しいのですから」と強調しました。

 * * *

 重い症状の人ほど負担も重い。償還払いでなく、限度額を超えた部分が現物給付になるだけでも少しは助かります。しかし国はその気がない。
 自治体はどうか。富山県のように優れた障害者助成をもつところもあります(前号に既報)。
 東京都の場合、1・2級の人(心臓・じん臓・呼吸器・ぼうこう・直腸・小腸・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害の内部障害者は3級も含む)を対象 に医療助成します。しかし六五歳以上になって該当した人は対象外(2000年9月から)。所得制限もあります。
 このように自治体によって対応がまちまち。「息をすること」への保障が住むところによって違うのが実態です。
 全日本民医連では、在宅酸素療法の患者さんなどの実態を調査し、改善を求める計画です。


3割以上が経済的な理由
 大阪医療事業協同組合は、取引のある在宅酸素取扱業者四社から聞き取りをしました。内容は10月に利用中止になった件数とその理由について(表)。
 その結果、中止総件数596件のなかで「経済的理由」による中止が213件、35.7%でした。調査は70歳以下の患者も含みます。20万人とも言われ る在宅酸素療法患者のうち、負担に耐えられず中止する人がたとえ2%としたら、4000人の推定に。
 調査した同組合の中村毅専務理事も「国の制度として医療費助成が必要」と強調します。 

在宅酸素中止状況

大阪医療事業協同組合調べ(2002.11.13)
取扱い会社
主な地域
取扱い患者概要
10月
9月
中止総件数
死亡
入院
転院その他
経済的理由
経済的理由
大阪市内
1500
139
27
70
30
12
大阪府と和歌山
1500
192
34
65
17
76
23
大阪府下
1500~1600
93
40
53
23 
大阪府城
3000
172
100
72
23
合計
1500
596
383
213
23
注)C社の集計は10月20日現在
[参考]
西日本合計
 
498
92
203
58
145
23

 (民医連新聞2002年12月1日/1294号)