〈連載〉医療・経営構造の転換/ 地域での役割自らつかんで/ 病院、診療所が互いに役割特化させ/ 青木克明(広島共立病院・院長)
広島医療生協・協同診療所は、被爆者医療の拠点として活動を続けてきました。隣地が取得できたのを機に四階建てに拡張、在宅支援の機能を備えた医療・福祉の総合施設「ふれあいセンター協同」として生まれ変わりました。
被爆医療の発祥地で
広島共立病院に属していたデイケア、訪問看護、往診、ヘルパーステーションを移動し、新たに一八人収容のショートステイ、配食サービス事業を開始。これによって病院は急性期対応型の色が濃くなりました。
老朽化した協同診療所の建て替えは長年の課題で、建設地を模索していた時に隣接地の取得の話が飛び込んできました。「移転せずに、被爆医療の発祥地でもある当地で医療の継続を」と強く望む組合員の声にも応えられることになりました。
声と議論を重ねて
「組合員の意見を生かした施設づくりを」と、建設委員会を結成。8回のワークショップや2回の健康まつりを積み上げ、免震構造、回転ドア、吹き抜け、喫茶コーナー、屋上庭園などをもつ自慢の施設が実現しました。
診療所にあったデイサービスと病院のデイケアの合併は、職員の協力と、入浴施設を新設したことで、スムーズにすすみました。
ショートステイは18床の個室主体のユニットケアで、夜間は安全のため夜勤者1人、当直者1人の配置にしており、不採算部門ではありますが、事業の要として位置づけました。スタート2カ月でほぼ満床状態になっています。
配食サービスは地域に10食、他の診療所1カ所の利用ですが、配食ボランティアが増えるに従ってひろがっています。
デイケアが終わってそのままショーステイに入所できたり、ショート入所者がデイケアのプログラムに参加することもあり、利用者からは「施設が集中しているので便利」だ、と好評です。
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診療所の胃内視鏡検査は病院に依頼することになりました。そこで不要になった電子スコープの活用先を探していました。病院では機種が違うため使えないのです。「チェルノブイリ支援・広島医療協議会」に依託したところ、チュルノブイリの病院で使っていただけることに。
現地では小児甲状腺癌が多発しており、広島の被爆10年後と同様の状態だといわれています。今後、胃癌の多発が予想され、早期発見に電子スコープが役立つことが期待されます。
世界のヒバクシャの連帯のに少しでも役立てばと、組合員職員も「贈り出しカンパ」を行いました。
(民医連新聞2002年12月1日/1294号)