国民負担増撤回は景気と経済たて直す道/小池晃参院議員(全日本民医連理事)に聞く国会の焦点
10月18日から第155臨時国会が始まりました。日本共産党の小池晃参議院議員(全日本民医連理事)に政治情勢とたたかいについてききました。
(編集部)
「早期処理」で景気はますます悪化
不況対策と補欠選挙
10月27日、衆・参7選挙区で補欠選挙が行われました。与党3党は5つの選挙区で勝利したと言っていますが、得票率を大幅に減らすなど、内実は違っています。
有権者の多くが、「自民党をはじめとする与党の政治に愛想をつかしつつ、しかし、民主党にも期待できない」と棄権しました。それは、これだけ景気が深刻 な中で、共産党をのぞいて、どの政党もまともな解決策を提案していないと映ったからです。
投票日翌日の毎日新聞(28日付)のコラムには「国政の焦点である不良債権処理や税制改革で具体的な政見を語ったのは共産党だけ。自民党は景気対策を、 民主・自由・社民の3党連合は反利権を訴えたが、いずれも説得力に欠けた」とあり、マスメディアもそうみています。
いまや首相と竹中大臣だけ
不良債権処理というのは、銀行の帳簿から落とすために借金を「棒引きするか、取り立てるか」の2つの方法しかあ りません。それを「早期処理」の名の下に、大企業からは借金を棒引きし、中小企業からは取り立てる…。これだけ景気が悪い中でそんなことをしたら、さらに 中小企業が潰れてしまうと、誰が見てもわかります。しかし、1年前の時点で、「不良債権の早期処理が景気を悪化させる」と警鐘を鳴らしたのは共産党だけで した。テレビ討論などでも「ではどうするのか」といっせいに反発されました。
ところがいまや、他の野党だけでなく与党内部からも「早期処理は景気を悪化させる」の大合唱がおこり、不良債権早期処理の旗を振るのは、小泉首相と竹中大臣だけという状況です。
小泉政権のもとでさらに加速
日本経済はいま、非常に深刻な状況になっています。
私は10月25日の参院予算委員会で、この五年間にくらしと経済がどういう状況になっているかを示し、小泉首相に迫りました。まず、民間の年間平均給与 は13万円減りました。世帯あたりの可処分所得は月額3.2万円の減。従業員数は259万人減。一方、増えたのは、失業者が131万人増、自己破産した人 は約9万人増。自殺者は3年連続3万人を超えています。なかでも経済苦を理由にした自殺は昨年6845人で、5年前の2倍です。
こうした状況は、小泉政権になってとくに加速し、平均給与が5年で13万円減ったと言いましたが、昨年1年間だけで7万円減っています。失業者は17カ 月連続で増加し、不良債権は10兆円増加しています。この数字には小泉首相も「大変深刻な状況です」と言わざるを得ませんでした。
財界や日銀などから危機感の声
しかも、こうした深刻な状況のもとで、さらに3兆円を超す社会保障の負担増です。これには、財界や政府系の機関からも心配する声があがっています。
日本生命のシンクタンク、ニッセイ基礎研究所は「秋以降来年度にかけて予定されている家計負担増、給付の削減は、一つ一つは大規模でないものの、集める と相当規模に達する。来年度の景気動向からすれば、急速な負担の増加は景気悪化の引き金になりかねない」(『エコノミスト・レター』9月6日号)と言って います。
また、日銀も「個人消費についても、社会保障負担増大による可処分所得への影響も加わって、ごく緩やかな回復にとどまるものと見られる」(日本銀行『経済・物価の将来展望とリスク評価』2002年10月30日)と言っています。
負担増やしすぎだから「減税」?
あまりにもひどい社会保障の負担増に対し、政府の側からも危機感が表明されています。
この3兆円の国民負担増を国会で最初に指摘したのは、7月の共産党の志位委員長による党首討論。その1カ月くらい後に日経新聞が一面トップで「来年の負 担増は大変だ」と報道しました。その後、政府でも問題視する声があがるようになりました。
9月9日の経済財政諮問会議の議事録をみると、委員で大阪大学の本間正明教授は「介護保険料や失業保険料の引き上げなど考慮していなかったものもあ り、…減税規模としてGDP比0.5%程度ないしそれ以上はマクロバランス上の配慮として必要だ」というのです。つまり、「社会保障の負担を増やし過ぎた から、あわてて減税する」というのです。ところが、減税の内容もデタラメで、投資減税とか研究開発減税と、大企業のしかも一部にしか恩恵がなく、国民生活 には役に立たない内容です。
政府はこれまで「財源がないから社会保障の負担増を」と言ってきました。しかし、減税する財源があるなら、最初から負担増をしなければいいのです。
再び世論と国会動かす運動に
経済は、国民一人ひとりがささえています。ですから、「国民のくらしを応援する」ことなしに日本経済の再生の道はありません。この当たり前のことが今、問われています。
みなさんととりくんでいる医療、介護、年金、雇用をめぐる社会保障の負担増を撤回させるたたかいは、いまや社会保障の枠内にとどまらず、日本の経済を立 て直すたたかいです。世界経済に占める日本の役割を考えれば、さらに大きな意味を持ちます。そこにまず確信を持つ必要があります。
前国会では、3000万人の署名、650を超える地方自治体の決議、数次にわたる大集会が、野党を最後まで結束させる力となりました。
今度は、社会保障の負担増を撤回させるということを、国会の中心的なテーマにするために大きな世論をつくり、再び国会を揺り動かす必要があります。
また、前国会で国民の世論と運動の力で継続審議に追い込んだ、有事法制や個人情報保護法案などの悪法を復活させず、息の根を止めていくことが大事です。
有事法制について言えば、マスコミは与党が今国会での成立を断念したなどと報道していますが、与党は隙があれば法案を通してしまう構えを崩していませ ん。政府は修正すると言っていますが、与党内では「法案の中味や考え方を変えたのではなく、国語の問題だ」と言っています。
有事法制はきっぱり廃案にするしかありません。イラクに対するアメリカの先制攻撃の危険が高まる中「日本は加担しない」という声をあげていくことが非常に重要になっています。
(民医連新聞2002年11月11日/1292号)