地域にねざしともにつくる 心かよう看護/ 安全性・まちづくり・人権を守るとりくみを交流/ 第6回 全日本民医連 看護活動交流集会ひらく
第6回全日本民医連看護活動研究交流集会が9月29~28日、神奈川県横浜市で開かれ、看護師やSWなど1057人が参加しました。今集会 に向けて運営委員会が呼びかけた「転倒・転落防止の研究的とりくみ」については71演題の応募があり、うち46演題が発表され、全体では515の応募演題 のうち318演題が報告されました。
開会にあたり肥田泰全日本民医連会長があいさつ、現地設営委員長の長島千恵子さんが歓迎の言葉をのべました。
全体会では「地域から見つめよういのちの大切さ、築こうひとびとと共にある看護」と題してシンポジウムが行われ、特別報告として、全日本民医連・医療の安全モニター委員会のチームが「転倒・転落調査のまとめ」を発表しました。
1日目午後から2日目午前にかけては、3カ所17会場を使い、7つのテーマで分科会が行われました。3つのポスターセッションを含む30の分科会で、参加者は研究報告を受け活発に交流しました。
2日目の午後は劇団前進座の嵐圭史氏が記念講演しました。
●シンポジウム●
地域から見つめよういのちの大切さ
築こうひとびとと共にある看護
看活研運営委員会の佐藤静香さんの司会で、四人のシンポジストが発言しました。
診療所新築で共同組織がひろがる
医療生協かながわの常任理事、杉井俊子さんは「診療所つくりに燃える組合員」として、中田診療所の移転新築を成功させようと組合員と職員が力を出し合って活動した経験と、9月2日にオープンを迎えた喜びを語りました。
何度も断られ、やっと見つけた建設地、雨の中の訪問活動で「待っていた」と加入してくれた人のことなど、苦しかったこと、うれしかったこと、出会い、学びなどがあり「職員といっしょの活動を組合員は望んでいる」と話しました。
11市町村18病院で ネットつくり連携
愛知・千秋病院看護部長の寺田路子さんは「地域医療福祉ネットワーク」のとりくみを紹介しました。
千秋病院は八四年に開院し、苦難のすえ98年に県内で初めて療養病棟を開設、現在は在宅総合ケアセンターを併設した233床の病院に。療養病棟からの転 院先を探がす必要から、他院のSWと連絡をとり合ううち「お互いの病院のことが知りたい」「地域の状況を知りたい」が共通の思いになりました。
学習会や会合を重ね、呼びかけた結果、市民病院4、町立病院1を含め11市町村18病院の参加で「地域医療福祉情報交換会」が正式発足しました。ケアや リハビリ、感染問題、診療報酬や医療制度改悪などをテーマに、看護・SW・介護職を中心として医師、リハビリ職まで約20人で定期的に会合を続けていま す。
患者に確実な他院の情報を提供でき、転院がスムーズになったほか、参加メンバーが社会問題に目を向け、解決の視点を共有できるようになったと語りました。
安全性への対策は現場に即して
東京・みさと健和病院の感染対策・リスクマネジメント担当婦長の加藤好江さんは「医療の安全性へのとりくみ」を「安全委員会」の役割を中心にのべました。
安全委員会は毎週2時間ほどの会議を開きます。提出されたアクシデント・インシデントレポートを職場会議、婦長会議、医局会議などのうち、どこで検討す るのが良いか振り分けます。安全委員会は全体に関わる問題のみを扱うと紹介しました。またアクシデントなどのレポートにコメントを記入し提出者に返却する ことで、どのように取り扱われたかが理解されていると報告しました。
車イスの改善、注射事故防止などの実例を紹介し「委員会がさまざまな角度から意見を出し合い、実際に即して改善策を見つけることが大切」と話しました。
人権と非営利 21世紀に引き継ぎ
兵庫・神戸健康共和会理事長の藤末衛医師は「地域に存在する民医連・21世紀の展望」と題して発言。95年の阪神大震災時に、全国からのべ1万3000 人の民医連職員が支援に駆けつけ組織的に行動したことを紹介しました。「夜中に到着した300人もの支援者を振り分け、カルテをつくり、回診し、訪問し、 炊き出しをした。自発性、組織性、社会性、集中性などに優れる民医連の日常活動を示すものだった。その体験が今の自分たちの活動に継承されている」とのべ ました。
そして「地域とともにある民医連」に発展するために21世紀に継承すべきものは、「人権・非営利の原点」と「共同の営み・民主的集団医療の2つの民主主 義」であり、転換が必要なことは「診断と治療の範囲で患者の生活や地域を見るのではなく、地域や生活から医療・介護を見る視点へ」、「自己完結型の医療か ら地域連携へ」と語りました。また看護の仕事を越えて「自分たちの事業所が二一世紀にこうありたい」と患者や地域に訴えるものとして「医療・福祉宣言」を つくって下さい、と呼びかけました。
(民医連新聞2002年10月11日/1289号)