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民医連新聞

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“生存権が侵害されている”国保料の過重中間所得層にも拡大 「福岡・北九州国保問題現地調査」6/26~28

 6月26~28日、「福岡・北九州国保問題現地調査」が行われました。中央社会保障推進協議会が呼 びかけ、実行委員会を結成、全日本民医連と各県連も参加しました。調査団は伊藤周平九州大学助教授を団長とし、井上英夫金沢大学教授を副団長に、全国から 75人、現地福岡から190人、計265人。
 2000年4月に国民健康保険法「改正」が実施され、全国的に資格証明書と短期保険証の発行が増加し、社保協の調査では100万世帯を超えています。そのため病気になっても受診できない実態が全国的に広がっています。
 本調査の目的は、資格証明書・短期保険証の発行が国保制度の維持に役立っているのか否か、市民の健康にどんな影響をもたらしているか、行政のあり方など 詳しい実態を調べることです。その結果をもとに国保の改善を求め、社会保障としての国保をめざす全国の運動に役立てることです。
 今回の調査が行われた福岡市は、すでに八七年から資格証明書の発行を続け、その件数は全国でもトップクラス。北九州市は保険料を六カ月間滞納した人には 機械的に資格書を発行し、収納率が九四%、保険料の取り立ては過酷です。同市では昨年暮れに保険証がなくて受診できず死亡者が発生しています。
265人が 調査活動を展開
調査団は両市の担当部局や国保委員、料金収納員・国保窓口係との懇談、滞納者との面談、大手町病院など市内の各相談所で聞き取りを行うなど、18班に分かれ30カ所で調査活動を展開しました。また27日に行った「国保110番」では、半日で33件の相談が寄せられました。
 28日の全体集会では、各班が報告し、相野谷安孝調査団事務局長がまとめを行いました。相野谷氏は「今回の調査で明らかになったのは、保険料の過重負担 が低所得者ばかりか中間層も苦しめていること。一律で機械的な対応の冷たい市政のもと、国民健康保険制度が空洞化し、生活破壊と悪循環しながら崩壊に向 かっている姿だ」と述べました。
 伊藤団長は「国保財政は限界。国庫負担を四五%に戻すことは急務」と述べ「審議中の医療改悪法は廃案に」と強調しました。
 また、井上副団長は「生存する権利、健康に生活する権利が広範に侵害されている。集団的な異議申し立てや、訴訟も視野に入れたたたかいを」と呼びかけました。

“冷たい市政”浮き彫りに

福岡・北九州現地調査レポート 北九州市の実態から

 6月27日は、18班に分かれての調査活動を実施。記者が同行した北九州市の調査をレポートします。(小林裕子記者)
 【北九州市当局との懇談】6月27日午前、井上英夫副団長はじめ37人の調査団は、北九州市の保険管理局理事、年金課長ら五人と懇談。事前の質問書に市側が回答し、質疑と話し合いが行われました。

死亡者を出しても改めない
 市側は「本市は政令市では一人あたりの保険料は最低。所得水準は低いが、努力して収納率 を高位に維持している。国保は負担と給付の『公平』の上に成り立つ制度だ」と説明。「保険料減免制度の周知、窓口での対応は細かく行っている」と『滞納に ついての弁明書』など申請様式を提示。また、昨年4月に国保証がなく手遅れで死亡した女性(32歳)の事例については「相談に一度も来なかった」と、お悔 やみを言うどころか報道したテレビ番組が一方的だと批判しました。

滞納者の“機械的切り捨て”
 国保加入18万6000世帯中、資格書は3188世帯、短期証は6942世帯、合わせて1万世帯を超えます。他に保険証の不交付が4982世帯。短期保険証の切り替え時に取りに来ないケースは嘱託の徴収係に回り、追跡統計もありません。
 母子家庭、乳幼児や病人のいる世帯も特別な事情があるとみなさず、保険料の「支払い能力」を追及し、払えなければ保険証を取り上げる…。これら世帯の有 病率など無論把握していません。また、同市の生活保護率が減少している「一見不自然」な現象がありますが、国保料を払えない困窮世帯を機械的に保険給付か ら切り離し、その後何のフォローもしないという図式が市当局の答弁から容易に想像できます。

あくまで「相互扶助」 に固執
 調査団から「同市の『国保の手びき』に国保法の目的を明記した第一条が記載していないのはなぜか」と指摘され、市は「当然のことだから」と言う一方、「権利を主張する前に義務を。国保の趣旨は『相互扶助』だ」と繰り返しました。
 井上副団長は「国保法のどこにも『相互扶助』など時代遅れな言葉は入っていない。社会保障を実現する途上に保険制度ができたが、保険料が払えない人も強 制加入にしている趣旨は、誰にでも医療を保障するとの精神のため」と諭し、「保険証を取り上げて、医療から市民を遠ざけたり、国保行政の役割を国保財政運 営だけに狭めてはいけない」と批判しました。

相談が急増
 【小倉民商での聞き取り】27日午後、小倉民主商工会事務所を調査団が訪問。
 阪本博幸小倉民商事務局次長は、「弁明書など見たことない」と一言。民商の「何でも相談会」は国保の相談が増え、市役所に同行することもしばしば。市の 窓口係は、滞納額をはじき出し「いくら払えますか」の一点張り。阪本氏は「『あの女性のように死んだらどうするんだ』と迫って保険証を発行させたこともあ ります。政令市では国保課長は中央から天下ってくる。国保課の窓口には新人を配置している」とも。「最近の相談事例では、年金をかけていない人が多く、生 保受給の相談が多い」と深刻です。
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 現地調査最終日の28日に行われたまとめの集会でも、「収納係の職員も『国保料は高すぎ る』と思っている。しかし、嘱託職員であり、雇用契約継続のために従事している」(収納係・窓口係との懇談)、「国保税率を審議する国保運営協議会。しか し、市民の悩みは全く出されず、運営協議会自体が形骸化している」(国保運営委員の大学教授との懇談)といった実態も報告されました。

(民医連新聞2002年07月11日/1281号)