いのちと人権まもれ たたかう列島 いま、介護保険は 「見直し」目前 “現場の実態携え改善運動を”
-林泰則理事に聞く
社会保障審議会の介護給付費分科会では、介護報酬について介護事業者団体のヒ アリングが行われました。「施行から3年後」とされた「見直し」準備の一環です。2003年見直しの対象は介護報酬のほか、介護保険事業計画、介護保険料 の3つ。また、2005年度には介護保険法そのものの「五年に一度の見直し」が控えています。介護保険とその改善運動は、どんな時期にさしかかっているの か、林泰則理事にききました。
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介護報酬…「引き上げて」が事業者共通の声
「ヒアリング」には、福祉サービス協会やNPOなど、11団体が選ばれ、意見陳述しました。
細部には違いがあっても、共通していたのは「介護報酬引き上げ」を求めた点でした。訪問介護とケアマネの報酬に議論が集中。「介護職にも一生勤められる 報酬を」「年収600万円の元看護婦のケアマネジャーに、300万以上出せない現状では、後任の補充に困る」などの声があがりました。
これに対し、厚生労働省側は「診療報酬すら下がる、厳しい時代」と述べ、報酬全体はひきあげずに、「施設の報酬を削って在宅分野にまわす」「ケアマネの 業務内容によってランクづけも検討」などと、個々のサービスへの配分の調整にとどめる方向をうちだしました。
しかし、こうした方向の議論では、現在の介護報酬の矛盾は掘り下げられないし、制度の改善につながりません。十分なサービスの保障、安定した事業経営、 ヘルパーをはじめとする職員の労働条件の改善を実現できる見直しとなるよう強く求めていく必要があります。その際、利用料の負担軽減を求めてゆくことも重 要です。
介護保険事業計画…「低い」国の目標、悩む自治体
介護保険事業計画は5年刻みの計画で各自治体が策定し、3年ごとに見直します。来年が「第二期」計画の策定時期になります。
基盤整備の遅れは、どの市町村でも認識しているところですが、その整備によって保険料の値上げに跳ね返ることに、市町村の悩みがあります。そもそも国が 基準としている数値が低い。例えば施設入所者数の見込みでは、2007年度の65歳以上人口の3.5%。現行基準3.4%からわずか0.1%の増というお そまつさです。
「基盤整備の充実」は、介護保険改善のたたかいの大きな柱でもあり、事業所を展開する立場からみても非常に重要です。市町村の準備状況を把握し、地域の高齢者の実態を手に迫り、実態にふさわしい計画をつくらせましょう。
介護保険料…減免の拡大と、実効性の検証
介護保険料そのものの見直しとともに、保険料の未納・滞納者へのペナルティ措置など、心配な問題は山積です。保 険料・利用料の減免制度をひろげるとともに、すでに実施されている自治体では困った人たちが本当に救われている制度となっているか、検証が必要です。減免 申請者に生活保護なみに資産調査を行ったり、何種にも及ぶ書類提出を求めるなど(「神戸方式」)の傾向が強まっています。
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国はあくまでも浮上している問題に向き合い、介護保険を適正な制度にしてゆく努力をすべきです。もともと介護保険導入前には介護費用の半分は国が負担していたもの。私たちが現場の実態に基づいて運動を強めることがいま、求められていると思います。
(民医連新聞2002年06月11日/1278号)