2002診療報酬改定への対応について
全日本民医連第35期第2回理事会
3月16日、全日本民医連理事会は次のアピールを発表しました。
経営を直撃する診療報酬の歴史的改悪
全日本民医連第35回総会の最中に2002年度診療報酬改定の全容が明らかになりました。
今改定は当初予定された通り、診療報酬制度創設以来のマイナス改定ですが、あてはめ作業の結果は、政府の発表の下げ率を大幅に上回っております。外来診 療料(再診料)や長期入院の大幅切り下げの影響の大きい200床以上の病院や、2桁引き下げの人工透析、リハビリの比重が大きい院所では5~10%もの減 収となる結果となっています。
特に、診察料や入院料などの技術料の引き下げは利益の減額に直結します。2001年度の民医連法人の経常利益率は1~2パーセントと予想されますが、そ れは2002年度の賃上げ財源を生み出せるか否かの水準にすぎません。従って、診療報酬引き下げの影響がそのまま2002年度決算に反映することになれ ば、大部分の法人が大幅な赤字決算となり、医療経営の継続が困難となる法人も生まれかねません。全日本民医連では、突然の経営危機による資金ショートへの 対策として全国連帯基金創設の審議を呼びかけていますが、まさに適正な経営管理を行っていても、医療制度や診療報酬体系の変化によって経営危機に見舞われ ることが現実となりました。
これに対して、政府の方針は、病院を潰したくなければ、特定療養費を導入し保険外とした再診料や入院料の差額を、患者から徴収せよ、というものです。良心的な医療機関の存続などは認めない、という態度です。
全日本民医連はこうした状況を打開するために、診療報酬の再改定を求める運動を組織していきます。
全ての役職員と共同組織の知恵と力に依拠し
私たちは、今回の総会で『民医連の医療・福祉宣言』を圧倒的多数の代議員の賛成で採択しました。今回の診療報酬 改定によってかけられた困難とのたたかいは、私たちの『宣言』が試される局面です。患者・利用者への無原則的な負担の転嫁は受診抑制に拍車をかけ、件数減 となって経営の悪化となって跳ね返ってくることにもなりかねません。
収益減の影響が大きいだけに、一点突破で切り抜ける道はなく、全ての役職員と共同組織の知恵と力に依拠した総合的な対策が必要になります。
具体的には、?受診回数や入院日数など利用の実態を正確に分析して、改定後の診療報酬体系の中で、減収を最小限にとどめるための方策を明らかにし、その 方策の実現可能性についての組織討議を行うこと。?全国及び県連の共同購入組織に結集して、薬品や治療材料の価格引き下げを実現すること。?介護保険事業 や保健・予防事業の新たな展開による収益の拡大の方策を検討すること。?あらゆる経費について見直しを行うこと、などです。
現在、各法人院所では、あてはめ結果と対応方針をもとに2002年度予算編成作業をすすめていますが、賃金体系や賞与、退職給付金の支給規程の見直しを しなければ年度の収支予算を立てられない所も生まれています。そうした対応に、全国一律の基準を設けることはできませんが、法人・院所管理部は対応する労 働組合や職員に対してねばり強く説明と話し合いを行い、ともに困難打開の道を探る立場を堅持しなければなりません。また、方針決定にあたっては、雇用の確 保及び患者・利用者の利益と安全を基準とした慎重な対応が望まれます。
賃金改定交渉などをめぐって労使の厳しい論争も予想されますが、そもそも、こうした問題を生み出している根本的な原因は、小泉構造改革方針に端を発した 医療改悪であり、診療報酬の再改定を求める運動を含めて、医療改悪反対闘争をともに前進させる確認が必要です。
全日本民医連理事会としても、緊急に診療報酬対策交流会を開催するなど、全国の知恵と力を総結集してこの事態を打開するために最大限の努力を行う決意であり、全国の民医連諸組織が真正面からこの事態と向き合うよう呼びかけるものです。
(民医連新聞 第1272号 2002年4月1日)