第一線の医療を破壊する4・1診療報酬改定
医療経営に大打撃 減収率4―5%の医療機関も
3法人・病院からの報告
2月20日発表された診療報酬改定の内容は、逓減・包括・実質引き下げのオンパレード。財務省と厚労省で報酬点数をザクザク削った合作です。四月の改定実施を前に、3つの法人・病院から寄せられた、試算の概要や対応の様子を報告します。
年間1億円を超す減収に
大阪・西淀病院
表 西淀病院での試算(月額・円) | ||||||||||||
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※表は月額ベースでの試算。年間に直すと 1億円を超えるマイナスに。 |
2月20日に診療報酬の改悪が明らかになりました。制度開始以来はじめてのマイナス改定にとどまらず、第一線の医療を破壊する重大な問題を持った改悪内容に大きな怒りを感じます。
西淀病院はベッド数258床、現在は病院から50メートルほどの場所に小規模の診療所を開設し、内科の慢性疾患診療をしていますが、今年3月から病院の隣接地に新診療所の建設に着工し、10月には全科の外来を移す計画をすすめています。
今回の改定では、月間の医療収入のマイナスが950万円、年間1億円を超える医療収入の減少が予想されます(表)。同時に大きな問題として?180日を 超える入院患者の入院料、?200床以上の病院で再診料に特定療養費を導入する、?透析で食事加算を廃止するなど、保険診療の範囲をさらに狭める内容で す。長期に入院が必要な患者さんに負担がかかり、お金がなければ退院が迫られます。再診時の自己負担も拡大されます。この問題について、院所・民医連とし ては、経営の視点からだけでない対応が求められます。
先日西淀川区内の200床を超えるある病院から「『特定療養費』についてどうするのか」と問い合わせの電話が来ました。他院でも病院外来を廃止し、近接 診療所を建設するなどの動きが始まっています。たたかいと対応の両面で民医連の役割発揮が求められています。(藤野昌市・事務長)
法人経営にも打撃的な影響
東京・健和会
東京・健和会で行った今回の診療報酬引下げのあてはめ試算では、四億円を超える減収です。病院・透析・診療所・歯科、すべてで予想をはるかに超える大幅 な減収になりました(図)。特に、病院の減収は、法人経営に打撃的な影響を与えます。東京民医連の病院群の試算では、200床以上が、4%以上の減収、 200床未満が、3%以上の減収で、病院群全体で、12億円を超える減収です(2001年度病院群決算見込みでは18億円の赤字)。
また10月から「外総診」が廃止されれば、外総診算定患者による収益の10%以上(法人全体で6000千万円)がさらに減収になります。これは法人経営の存続にもかかわり、都市部の病院医療経営の構造転換が急務となります。
診療報酬引き下げの被害を防ぐためのあらゆる対策・対応と合わせて、「診療報酬引き下げと高負担」時代におけるスタンスとして「たたかいと対応」の足も とをしっかり固めることが大事です。そのための職員および労使間の協議・合意が、この困難を切り開く重要なカギとなります。それが「フリーズ」すると法人 経営が、重大な事態になりかねないほど、打撃的な影響をおよぼす診療報酬改定です。(羽田範彦・柳原病院事務長)
共同組織とともにたたかいと対策を
北海道・中央病院
今回の改定は厚生労働省が言うようなマイナス2.7%の引き下げどころか、あてはめ試算した結果ではマイナス 4%、5%以上になる医療機関も出ています。中央病院(454床)のあてはめ試算では、入院、外来合わせてマイナス4・6%との結果になりました(前回改 定ではプラス1%)。特に今回の改定の特徴は再診料(逓減制)や入院基本料が実質的に引き下げられたことで、経営的にも多大な損失となります。
当院では現在、4月開院をめざして近接診療所を建設しています。当面は中央病院の外来を内科中心に60%を移す予定ですが、早い時期にすべての外来を近接診療所へ移す計画です。
入院では急性期病院加算の取得が急務で、平均在院日数のいっそうの短縮が求められています。そのためにも医療経営構造転換のなかで病床の再編と現在33床の療養病床を含め、回復期リハ病床としての療養病床の拡大を計画中です。
中央病院が医療経営構造転換をすすめていく過程では職員、共同組織を中心とした地域の理解と協力が不可欠です。特定療養費を拡大する今回の診療報酬改定 の内容・ねらいの学習をすすめ、共通の認識をもって「たたかいと対応」をすすめることが重要と考えています。(松木一紀・事務次長)
(民医連新聞 第1271号 2002年3月21日)