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民医連新聞

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国民のための医薬品選択において大切な視点とは

兵庫県医療事業協同組合 全日本民医連理事 東久保隆

 相次ぐ患者負担増や薬価改定の中で患者・国民のための医薬品選択をどう考えるか東久保隆全日本民医連理事に寄稿をお願いしました。

医薬品市場とジェネリック薬品の動向

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 国内の約7兆円の医療用医薬品市場は、いわゆる「先発医薬品」が84%を占め、うち売り上げ上位200品目で3分の1を占めます。それらの多くは日本だ けで許可・使用されている「ローカルドラッグ」といわれる薬です(図1)。新薬は99年には39成分、00年は39成分、01年は23成分がさらに薬価収 載され、医療用医薬品市場は伸びに転じました(図2)。
 今年四月実施の薬価改定では、いわゆる「後発医薬品」(ジェネリック)が大幅に薬価ダウン、ジェネリック市場の約30%を一気に圧縮しました(メーカー によっては50%薬価ダウンも)。このため先発医薬品の売り上げ占有率は急速に高まる一方、ジェネリックは薬価保障が大幅に削減され、供給が不安定になる 恐れも。これは、先発医薬品群の延命をねらったものです。
 厚生労働省の調査では医薬品の購入差益は薬価の7・1%にすぎず、保険請求した薬価のほとんどが製薬企業の売上げに置き換えられ、大手製薬企業の利益率 が20%以上にもなる根源となっています。すなわち、1995年から2000年までの間に医療用医薬品市場が1兆2000億円削減されたうち、1兆円は医 療機関の差益の減少で、2000億円は卸の合併による大型化と販売管理費の圧縮で減少し、大手製薬企業は空前の繁栄を続けているのです。
 民医連にはどんな役割が求められるでしょうか。

医薬品選択に求められるもの

 医薬品の選択については、2つの点からのアプローチが大切です。
 第一に、後発品の活用で医療費の国民負担を減らすことができます。欧米では後発品は数量でみたシェアの40%を超えていますが、日本では12%しかあり ません。すでに後発品が出ている特許切れの先発品が金額シェアの39%も占める日本の状況は異常です。
 本来ならば厚生労働省が、特許切れ医薬品の薬価を適正に引き下げ、医薬品費を削減すべきです。ところが先発とジェネリックに薬価上の格差をつけ、ジェネ リックメーカー育成を回避し、医薬品の安定供給を妨げています。厚生労働省がその気になれば、国民医療費・医薬品費の引き下げはすぐに達成できます。
 民医連は、「オレンジブック」といわれる後発品の同等性に関するデータをもっています。後発品の今日的な存在意義を確認し活用をすすめ、ジェネリック製造供給メーカーや諸団体との共同でとりくむことも緊急課題です。
 第二に、市場で圧倒的な部分を占める先発医薬品を厳しくチェックすることです。ノスカール、セルタ、バイコールといった新薬で、日本の内外で副作用によ る死亡例が報告され薬価表から削除されたり、脳代謝改善剤のように適応症の再評価で効果が証明できず、市場から消える事態は相変わらず続いています。
 また新薬は、適応症が拡大され、学会等が治療ガイドラインに載せることで年間売上げが1000億円となることもしばしば。例えば、糖尿病治療薬では、イ ンシュリン・血糖降下剤よりも、周辺症状を改善するといわれているベイスン・キネダックなどの売り上げが大きくなっています。これらの薬価・適応症・効 果・安全性がほんとうに一人ひとりの患者にとって適切なのか、よく見きわめることが大切です。
 私たちには、新しく院内で購入・使用する医薬品について、「薬事委員会として有効性・安全性・経済性の判断をすること」「患者さんへの投与にあたっての 有効性・安全性を確認すること」をルーチン化するとともに、新薬と先発品、ジェネリックについての背景を知って対応することが求められます。

(民医連新聞 第1271号 2002年3月21日)