【声明2025.03.27】乳腺外科医師えん罪事件の東京高等検察庁の上告断念、無罪判決確定をうけて
2025年3月27日
全日本民主医療機関連合会
会長 増田 剛
2025年3月12日、東京高等裁判所第8刑事部は、乳腺外科医師えん罪事件ついて検察の控訴を棄却し、2度目の無罪判決を出した。そして、東京高等検察庁は上告を断念し、2025年3月26日、乳腺外科医の無罪判決が確定した。
2016年の起訴から8年余が経過し、異例の長期審理となったが、乳腺外科医は一貫して無実を主張し続け、判決を受け「この裁判の結果については当然であり何の疑いもないと考えています」と述べた。当然の無罪判決確定である。当会は「遅すぎる無罪判決」ではあるものの無罪が確定したことに対し、心から歓迎する。
一方で、8年余にわたり乳腺外科医の人権を侵害し、無実の医師に対し不当な介入をおこない、逮捕し、105 日におよび勾留するなど、医師の生活や仕事そして家族を奪った警察と検察に満身の怒りを持って抗議する。
一審では「被害を訴える女性患者の術後せん妄の可能性」と「科捜研の鑑定の信用性」が争点となり、「犯罪の証明がない」と無罪を言い渡した。しかし、検察が控訴することによって、裁判が長期化し、最初の控訴審で東京高裁が一審判決を覆しての有罪判決(2年の実刑)を下し、最高裁は自ら判断することなく、東京高裁に差し戻しを行った。今回の差戻し控訴審では、「科捜研のDNA 定量検査の信頼性」を争点とし、一審の無罪判決に「事実誤認は認められない」とし、検察側の控訴をしりぞけた。
無罪判決確定を受け、乳腺外科医の逮捕に根拠がなかったことが証明された。本件は、警察と検察による組織的な犯罪である。医師の通常の診療行為に対し無実の罪を着せて逮捕し、医師とその家族を苦しめ、冤罪を成立させようとした事実は、決して許されるものではない。そして、医療機関への警察と検察の不当な介入は、医療現場の委縮をまねき、ひいては患者のいのちや健康に損害を及ぼすこととなる。医師・医療スタッフが安心・安全に医療に従事するため、医療機関への不当な介入が二度と繰り返されないことを強く求める。
以上
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