【声明2024.12.04】医療提供体制を麻痺させている、薬価の中間年改定廃止を求める
2024年12月4日
全日本民主医療機関連合会
会長 増田 剛
2020年12月にジェネリックメーカーの不祥事に端を発した医療用医薬品の供給困難は2024年12月となる現在でも終息の兆しが見えない状況である。この医療用医薬品供給困難においては、新型コロナ感染症流行時には解熱剤や咳止めなどの薬物治療が行き届かない状況が出現し、多くの国民が必要な医療を受けられない事象が発生した。最近でも麻酔薬の不足により手術が出来ない事象も発生している。
このような医薬品供給困難の状況に起因しているのは、毎年の薬価改定による後発医薬品をはじめとする薬価引下げの影響であることが多くの医療関連団体や調査研究機関が指摘しており明白な事実である。すなわち公定価格である薬価の度重なる引下げによって、後発医薬品を中心として不採算医薬品が発生し、医薬品の製造・販売、そして流通に影響を及ぼしている。この状態が続くこととで必要な薬が必要な患者に渡らない状況が継続する事態となり、国民のいのちと健康を脅かすことになるため、早急な対応が求められる。
また、そもそも「市場実勢価格の乖離が大きい品目について(中間年の)薬価改定を行う」目的で、2年に1回の薬価改定から初めて2021年に中間年改定が実行されたが、その後この中間年改定の目的がまったく無視され、通常の薬価改定として毎年実施され続けている。従って当初の目的から逸脱しておこなわれている中間年改定が、医薬品供給困難に拍車をかけていることは大きな問題である。
更に医療機関では毎年の薬価改定により備蓄医薬品の資産価値(在庫金額)が毎年減少し、事業収益や損益差額の減少が生じている。つまり資産価値が減少することで医療機関の経営面、運営・維持面で大きな影響を受けており、これは医療職能団体からも指摘されていることである。
このように、薬価の中間年改定は医薬品供給困難から必要な医療が提供されない点で国民への大きな負担を発生させ、また医療機関においてもその対応に労力が費やされ、備蓄医薬品の資産価値の減少から経営悪化も招いている。このような医療提供体制を麻痺させ、国民のいのちと健康を脅かしている、薬価の中間年改定を廃止することを強く求めるものである。
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