【声明2024.08.21】長期収載医薬品への選定療養導入は医療の中核部分への差額の持ち込みであり、撤回を求める。医薬品の安定供給にむけての努力こそ最優先すべき
2024年8月21日
全日本民主医療機関連合会
会長 増田 剛
全日本民医連薬剤委員会
委員長 野口 陽一
2024年10月から長期収載医薬品への選定療養の導入が予定されている。
これまでも選定療養がさまざまな形で導入されてきたが、今回の選定療養の導入は、医療の中でも投薬という診療行為の中核をなす部分にかかるものである。これにより、貧富の格差が医療内容の格差に直結することになる。
後発医薬品では先発医薬品の承認の際に要するデータまでは求められておらず、後発医薬品に処方を限定しようとすることは医療上も適切ではない。例えば精神科領域の医薬品においては、薬が変わることによって、精神的な負担が発生する場合が予想でき、後発医薬品への変更に困難さが生じる。「医療上の必要性」ということで対象除外となるケースもあるが、薬の使用感については「医療上の必要性」と認められないなど、この選定療養への様々な対応に医療機関に煩雑さを押し付けることとなる。対象除外の条件として示された7月12日付けの厚労省疑義解釈通知が独り歩きすれば、医師の裁量権を侵害しかねないとの懸念の声も出されている。
差額徴収をめぐっては、患者への理解も得づらいことは明らかで、薬局窓口の実務が混乱することも明らかである。特別負担の費用計算が複雑かつ負担割合が4割を超える場合も発生するなどの問題もある。
薬剤の保険給付にまで差額を持ち込むことは、保険料を払っている国民に対する欺瞞であり、国民皆保険制度を、崩壊させることにつながりかねないことを強く危惧する。
医薬品の供給困難はすでに3年以上も継続し、いまだ出口が見えない状況である。2024年7月現在での医薬品の限定出荷・供給停止は合計22%で、さらに冬季においては3割近くの医薬品が正常に流通しない状況が続いている。これは前代未聞の異常事態であり、一刻も早く解消すべき問題であるが、さらに不安定供給に追い打ちをかける恐れのある「選定療養の導入」が10月に控えている。
この異常事態が続く中で選定療養を強行するということは、受療権の侵害につながり、更なる混乱を招くことは明らかであり、国による愚策と言わざるを得ない。
また、薬剤師をはじめとする医薬品供給困難の対応の最前線にいる医療職種は対応に多くの手間を取られ、疲弊しており、国民のための安全安心の薬剤活動に大きな支障をきたしている。
出口の見えないこのような医薬品の供給が困難な状況を一刻も早く解消することに真剣に注力すべきである。
以上のことからこの長期収載医薬品への選定療養の導入について断固反対し、撤回を求める。
以上
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