【声明2024.07.05】旧優生保護法国賠訴訟7・3最高裁判決を受けて
2024年7月5日
全日本民主医療機関連合会 会長 増田 剛
同 人権と倫理センターセンター長 加賀美 理帆
7月3日、旧優生保護法下で不妊手術を強制された被害者が国に損害賠償を求めた5件の訴訟の上告審判決において、最高裁大法廷は、旧優生保護法の規定を憲法違反と判断し国の賠償責任を認めるとともに、「除斥期間」規定について旧優生保護法の被害者には適用しないという統一判断を示した。今回の判決を全面的に支持するとともに、原告のみなさん、弁護団をはじめ全ての支援者のみなさんのこれまでのご奮闘に心から敬意を表するものである。
最高裁は、憲法判断において、旧優生保護法の規定は立法時において個人の尊厳を保障する憲法第13条、平等原則を定めた第14条1項に違反するとした。最高裁が法令を違憲と判断したのはこれで13例目となるが、法律の制定時点から違憲と明示したのは初めてである。
また、除斥期間については、20年という期間の経過により賠償請求権は消滅し、国が賠償責任を免れるとすることは「著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができない」とし、さらに国による除斥期間の主張は「信義則に反し、権利の濫用として許されない」と述べ、過去の判例を変更する踏み込んだ判断を示した。その上で二審で原告が勝訴した4件に対する国の上告を棄却し、原告が敗訴した1件は審理を高裁に差し戻した。
旧優生保護法は、障害者の存在を否定する優生思想に基づき、子どもを産むかどうかを意思決定する個人の権利を「公益」を理由に国が一方的に剥奪する、許されざる「戦後最大の人権侵害」である。2018年の仙台地裁以来、各地で国賠訴訟が提訴されてきたが、原告は高齢化しており、39名のうちすでに6名が亡くなっている。心身の状態に不調を来している方も多い。原告に残された時間は極めて少ない。一方、議員立法として制定された一時金支給法の認定者は2024年5月末時点でわずか1110名にとどまっている。不妊手術を受けた2万5000人の多くは、自ら受けた重大な人権侵害に対していまだ声をあげられないままの状態におかれている。
今回の判決は、現在訴訟を提訴している原告のみならず、全ての被害者の救済に道を拓くものである。国会と政府は、最高裁判決の内容を重く真摯に受けとめ、すみやかに被害者に謝罪し、原告当事者をふくむ全ての被害者・家族の尊厳の回復と救済を図る法的措置を早急に講じるべきである。また、この旧優生保護法が現行憲法下で制定され、半世紀近くにわたり不妊手術が続けられ、さらに法改定後も被害者が放置されてきたことに対する深い検証と総括を行うことは、再発の防止と、障害者を差別する優生思想を払拭する上で不可欠である。第三者機関を設置し、早急に作業を開始することを要請する。
私たち全日本民医連は、医療団体として常に自省しながら、引き続き当事者のみなさんと連携し、旧優生保護法問題の全面解決に向けて取り組むとともに、個人の尊厳と多様性が尊重される社会、障害をもつ人にとっても生きやすい社会の実現をめざし、引き続き力を尽くしていく所存である。
以 上
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