【声明2023.06.02】旧優生保護法国賠訴訟・仙台高裁判決について
2023年6月2日
全日本民主医療機関連合会
会長 増田 剛
全日本民医連人権と倫理センター
センター長 加賀美 美帆
6月1日、仙台高裁(石栗正子裁判長)は、旧優生保護法下で不妊手術を強制された宮城県の女性2人が国家賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、「除斥期間」を経過したことを理由に原告の請求を棄却した一審仙台地裁判決を支持し、請求棄却の判決を言い渡した。原告の2人は、2018年に旧優生保護法国賠訴訟を最初に提訴した被害者、および被害を訴えながら長年にわたって提訴に至ることが出来なかった被害者であり、被害への補償と尊厳の回復を求める原告の切実な願いを切り捨てる不当判決と言わざるを得ない。
判決では、強制不妊手術を定めた旧優生保護法に対して、「子を産み育てるか否かを意思決定する権利を侵害し、極めて大きな精神的、肉体的苦痛を与えるもので著しく不合理」とし、法の下の平等を保障した憲法14条に反すると判断した。
一方、原告の賠償請求に対しては、除斥期間の適応制限は「請求権の行使が客観的におよそ不可能な場合」と限定した上で、「原告らは家族の会話などから、不妊手術、優生手術を受けたと認識し得た」ことを理由に、「(提訴は)困難であったが不可能ではなかったとは言えない」として、手術実施時を起算点に除斥期間の規定をそのまま適用し、原告の請求を棄却した。
除斥期間をめぐっては、2022年2月の大阪高裁以降の4件の高裁判決、本年1月の熊本地裁を皮切りとする3件の地裁判決において、除斥期間の機械的適用は「著しく正義・公平に反する」として原告の請求を認める判決が続いている。本判決はこうした流れに真っ向から反したものであり、到底受け入れられるものではない。
現在全国12の地裁・高裁で裁判が闘われているが、すでに5人の原告が亡くなっており、原告・被害者の救済には一刻の猶予も許されない。国会では2019年に制定された一時金支給法の見直しに向けた議員連盟も動き出している。本判決においても、旧優生保護法が違憲の法律であり、このもとで重大な人権侵害があったことを認めている。政府に対して、被害者の救済と尊厳回復に向けた措置を早急に講じることを重ねて強く要請するものである。
私たち民医連は、各地で闘われている裁判を支援するとともに、被害を受けた方々への補償の実現、尊厳の回復に向け、被害当事者のみなさんと手を携え、引き続き取り組んでいく所存である
以 上
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