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声明・見解

声明・見解

【見解2023.02.08】新型コロナウイルス感染症法上の位置づけ変更にあたって

2023年2月8日
全日本民主医療機関連合会
会長 増田 剛

 新型コロナウイルス感染症対策本部(以下「対策本部」)は、1月27日の厚生科学審議会感染症部会(以下「部会」)を踏まえ、同日、「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けの変更等に関する対応方針」(以下「対応方針」)を発表し、本感染症を、5月8日から、感染症法上の新型インフルエンザ等感染症に該当しないものとし、5類感染症に位置づける、ことを通知した。
 第7波以降、感染者数の爆発的な増加により、救急体制は機能不全に陥り、死者数は最大規模にまで拡大した。多くの医療機関、高齢者施設でクラスターが発生し、職員からも感染者・濃厚接触者が続出し、日常業務に多大な影響が出た。高齢者施設では、まともな補償が無いままの事業停止による大幅な減収に加えて、水光熱費などの例を見ない高騰も相まって、多くの事業所が経営継続を断念せざるを得ない事態に陥った。
 オミクロン株の伝搬力は強く、病原性は高くなくとも、基礎疾患を持つ方や高齢者にとっては引き続き重症化のリスクを伴う感染症である。従って、医療機関や高齢者施設には、患者・利用者の重症化・死亡を防ぎ、いのちを守るために、当面の間は「ゼロコロナ」が求められるため、これまでと同等の対策(手厚い体制の確保、ゾーニング・隔離のための空間、医療物資、感染防御具など)が必要なことは言うまでもない。5類への移行によって補助金が削減されることになれば、少なくない医療機関・介護施設が経営難に見舞われることは確実であり、適切な財政支援の継続が必須である。
 今回の「対応方針」からは、深刻な医療・介護現場のひっ迫状況を二度と起こさせない、という決意は感じられず、現場で働く医療・介護従事者の心情と大きく乖離していると言わざるを得ない。この方針では医療機関、高齢者施設が感染対策を継続することは困難であり、誰もが安心して医療・介護にアクセス可能な環境が壊されることが懸念される。
 私たち民医連は、憲法の理念に立脚し、人権を守る立場から、今回の「対応方針」は一旦取り下げ、あらためて、国民のいのちを守るための施策を構築するよう、強く求めるものである。

(1)医療提供体制
 「原則として、インフルエンザなど他の疾患と同様となることから、幅広い医療機関で新型コロナウイルス感染症の患者が受診できるよう必要な医療体制に向けて」進めるとあるが、対応が困難であった医療機関の多くは、感染している可能性のある患者と他の患者を分ける動線が確保出来ない、時間と空間を分けられないという施設上の限界があり、高齢者や基礎疾患を持つ重症化リスクの高い患者を感染のリスクから守り切れないという事情を抱えている。入院においても、有効な換気の確保やゾーニングを可能にする病棟構造が無いことや職員体制の困難さが要因である。こうした具体的な問題をどのように解決していくのか、明示されるべきである。

(2)患者の窓口負担
 公費医療の縮小に向かうことが示されており、受診抑制に繋がることが懸念される。患者本人一部負担を導入することは、医療へのアクセスを奪い、治療の中断を生むことは明白である。段階を踏んでとしているが、前提となる国民の経済状況は深刻であり、治療薬を処方すれば1回の受診で数万円と試算される窓口負担は、国民の受療権を大きく侵害する。現行の公費負担を継続すべきである。

(3)入院調整
 「入院調整も行政が関与するものから個々の医療機関の間で調整する体制へと段階的に移行していく」とし、最大規模の死亡者を発生させたひとつの背景である、治療が必要な患者が適切に入院できず、自宅や高齢者施設に留められている事態の解消など、肝心の問題解決が先送りとされている。現時点で行政が新型コロナ対応から撤退することは許されず、現行の入院調整機能を継続すべきである。

(4)医療機関への支援と介護事業所への財政援助
 「診療・検査医療機関から広く一般的な医療機関による対応への移行、外来や入院に関する診療報酬上の特例措置や病床確保料の取り扱い」について「具体的な検討・調整を進める」とある。しかし、今後も安全に感染症診療を進めるためには、必要十分な検査の実施、PPEなど感染防御具の備蓄、感染者用の個室の準備やゾーニングなどを行うことが必須であり、それによる患者減少や病床稼働の低下は避けられず、収入減は必至である。現状の支援策が縮小・廃止されれば、これまでコロナ診療にあたってきた医療機関からも撤退する事業所が発生しかねない。拙速な対応はせず、現行の支援を継続すべきである。
また、過去最大の倒産が発生している介護事業所への財政的援助をただちに実施することを求める。

(5)政府によるリスクコミュニケーションの抜本的な改善
 部会は、「(新型コロナウイルス感染症の)位置づけの変更により新型コロナウイルスの特徴が変わるわけではないことから、今後も感染拡大が生じうることを想定して、高齢者や基礎疾患のあるものなど重症化リスクの高い者を守ることも念頭に必要な感染対策は講じていくべきである。その際、国民の間で『今後感染対策は行わなくても良い』といった誤解や分断が起きないよう丁寧なリスクコミュニケーションを行う」と指摘した。第7波、第8波において、この点での総理や関係閣僚からの発信は、ミスリードと言われても仕方のないほど不適切なものであった。新型コロナウイルス感染症のリスクを述べず、医療・介護現場の実情をリアルに伝えることもなく、結果として、感染者数の拡大に繋がった要因のひとつともなった。「5類」への移行によりどのような健康リスクが発生するのか、そのことを科学的に示し誠実に説明し、協力を求めること無しには、国民の理解は得られる筈もない。これまでの対応を改め、真に国民に向き合った政治姿勢の確立を求めるものである。

以上

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