【会長声明2022.03.25】旧優生保護法国賠訴訟東京高裁判決に対する上告を速やかに取り下げるとともに、被害の全面的解決に向けた措置を早急に講じることを求める
2022年3月25日
全日本民主医療機関連合会
会長 増田 剛
3月24日、政府は、旧優生保護法を違憲と判断し、国に1500万円の賠償を命じた東京高裁判決を不服として最高裁に上告した。早期の救済・補償を求めてきた原告・被害者の願いに真っ向から背を向けるものであり、断じて容認できない。
3月15日の東京高裁判決は、旧優生保護法を憲法13条、14条違反とし、旧厚生大臣の責任を認めた。その上で、これまでの各地の地裁判決において原告の請求を斥ける論拠とされた「除斥期間」の規定について、その機械的な適用を「著しく正義・公平の理念に反する」と断じ、被害者救済を目的に2019年4月に施行された「一時金支給法」がその施行日から5年間を救済期間としていることをふまえて、2024年4月までに提訴すれば「除斥期間の効果は生じない」との判断を示した。初めて損害賠償を認めた今年2月の大阪高裁判決よりも救済範囲を拡大しており、すべての被害者救済への道を開くものだった。上告後の会見で、原告の男性は、「元の体を返してください。64年の人生を返してください。もし返せないなら上告を取り下げてください」と訴えた。政府が上告によって司法判断を先送りし、国による救済を遅らせることは、原告・被害者に人生を踏みにじり、さらなる苦難を押しつけことになる。
合わせて、政府は24日の会見で、「一時金の水準などを含む対応について国会と相談し、議論の結果を踏まえ検討したい」と述べ、現在の一時金支給法の見直しに言及した。この間の国賠訴訟などを通した被害当事者の切実な声や2つの高裁判決を反映したものである。同法は、「これ以上、被害者を苦しめ続けてはならない」と国会議員が主導し、議員立法として提案・制定され、旧優生保護法の問題点やそのもとでの深刻な被害が広く知られる契機ともなった。しかし、旧優生保護法の違憲性については明記されず、その制定や運用に対する責任の主体も「我々」という曖昧な表現になっており、さらに個々の被害者に直接同法を告知しないとした結果、今年2月末までの支給認定はわずか974件にとどまっている。また一時金として設定された320万円という金額は、大阪、東京両高裁判決で示された賠償額から大きく乖離したものとなっている。
旧優生保護法国賠訴訟には25名が提訴しているが、これまでに4人の原告が亡くなっている。被害者の大多数は高齢であり、すでに亡くなっている方も多い。原告・被害者の救済には一刻の猶予も許されない。政府に対して、東京高裁判決および大阪高裁判決に対する上告を速やかに取り下げるとともに、現行一時金支給法の抜本的な見直しをふくめ、被害の全面解決に向けた措置を早急に講じることを強く求める。
私たち民医連は、各地で闘われている裁判を支援するとともに、被害を受けた方々への補償の実現、尊厳の回復に向けて引き続き取り組んでいくことを表明する。
以 上
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