【会長声明2022.03.15】旧優生保護法国賠訴訟・東京高裁判決について -判決を高く評価するとともに、政府に対して、最高裁への上告をとりやめ、原告・被害者の尊厳回復に向けた措置を直ちに講じることを求める
2022年3月15日
全日本民主医療機関連合会
会 長 増田 剛
3月11日、東京高裁は、旧優生保護法下で不妊手術を強制された東京都内在住の男性が国を相手どって国会賠償を求めた訴訟の控訴審判決において、旧優生保護法の違憲性を認めた上で、原審の東京地裁判決を変更し、国に対して1500万円の損害賠償を命じる判決を言い渡した。2月の大阪高裁判決に続き、原告の請求を認めた2例目の控訴審判決となった。
判決は、強制不妊手術を規定した旧優生保護法の優生条項について、その立法目的が差別的思想に基づくもので正当性を欠き、目的達成の手段も極めて非人道的なものであり、憲法13条、憲法14条1項に違反することは明らかであると断じた。その上で、強制不妊手術の推進はそれを所管する厚生大臣の職務行為であり、国が国賠法に基づく損害賠償責任を負うと判断した。
さらに、争点となっている除斥期間(民法724条)の適用について、その起算点を手術の施行日とした上で、国が違憲の法律に基づいて強度の人権侵害を行ったこと、国が偏見差別を社会に浸透させたこと、強制や欺罔の手段により被害者が被害に気づくことができない仕組みを構築したこと、憲法に違反する法律によって生じた被害の救済を下位の法律(民法)に基づいて拒絶することは慎重であるべきであること、被害者が自身の被害を認識できないうちに時間の経過により請求が消滅すると判断するのは被害者にとって極めて酷であること、旧優生保護法改定(1996年)後においても、被害者が自身の被害についての情報を入手できる制度の整備を国が怠ってきたこと等を「特段の事情」として認め、正義・公平の見地からその適用を制限した。
そして判決は、被害が不法行為であることを客観的に認識し得た時点から相当の期間が経過するまでは、除斥期間は適用されないという考え方を示した上で、本件においては、一時金支給法が成立した2019年4月24日から起算して5年が経過する時までは、被害者が訴訟を起こすのが困難であることから除斥期間は適用されないと結論づけた。また、判決後に裁判長が敢えて所感を述べ、「優生手術から長い期間がたった後に提起された訴えであっても、その間に提訴できなかった事情が認められる以上、国の責任を不問に付すことは相当ではない」との考えを重ねて示した。
旧優生保護法下で実施された強制不妊手術について、同法の違憲性とともに、国に損害賠償責任があることを認め、除斥期間の適用を制限することで原告の請求を認めた本判決を高く評価するものである。本判決が示した一時金支給法制定時から5年間にわたる請求権の保障は、すべての原告・被害者が救済される内容でもある。国は、最高裁への上告を即刻とりやめ本判決を確定させるとともに、既に行っている大阪高裁判決に対する上告を取り下げるべきである。各地で訴訟が提訴されてから4人の原告が亡くなっており、原告・被害者の救済には一刻の猶予も許されない。2つの高裁判決を重く受けとめ、被害者の救済と尊厳回復に向けた措置を早急に講じることを要請する。
私たち民医連は、各地で闘われている裁判を支援するとともに、被害を受けた方々への補償の実現、尊厳の回復に向けて引き続き取り組んでいく所存である。
以 上
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