【声明2021.02.15】2021年の東京オリンピック・パラリンピック開催を中止すること を求めます。
2021年2月15日
全日本民主医療機関連合会
会長 増田 剛
菅義偉総理、元森喜朗東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会会長は、今夏のオリンピック・パラリンピックの開催について「開催ありき」の発言を繰り返しています。オリンピックを大きな目標として努力を重ねてきたアスリート、国民の期待に対して心苦しい判断となりますが、現在の新型コロナウイルス感染症に関する状況を科学的に冷静に見るなら、開催そのものの可能性・是非について再考し、中止の決断を行う事を政府と東京都、大会組織委員会に要望します。
昨年12月に組織委員会が発表した中間整理によると、選手に対し出入国時の検査のほかスクリーニング検査、試合前検査などが必要とされその為に検体採取やセンターや自動分析設備を設置し体制整備を行う事。選手に感染者・疑い例が発生した場合に備え、組織委員会感染症センター(仮称)を設置し、選手村での発熱外来の整備、入院先受け入れ医療機関、宿泊療養先の確保等を行うとしています。それに関わる体制は、医師、看護師、理学療法士など計1万人のスタッフを確保するという計画のようです(1月26日橋本聖子五輪担当相国会答弁)。また、国外からの観客受け入れについての検討は今後となっていますが、14日間の待機の廃止や、公共交通機関の利用を認めるなど、現時点でも感染対策上で看過できない事項も含まれています。
新型コロナウイルス感染症は未だ収束の見込みも視えない状況で、第3波においては、1万人を超える陽性者が入院できず、自宅などに留めおかれ、中には在宅で死亡するケースが連日のように発生するなど、あってはならない事態が現実化しています。癌治療、手術の遅延や救急医療の停止など、通常の医療が行えないという実態も拡がっており、医療崩壊が進行しています。こうした傾向は、オリンピック・パラリンピックの会場となる東京を中心とした首都圏において特に顕著となっており、医療従事者も保健所もこれ以上の業務負担に対応出来る余力はありません。
さらに、1年を超える対応の中で、医療スタッフの心身の疲弊は限度を超えています。夏季、正月休暇もまともに取れず、国による財政支援の不十分さ、遅滞により賃金すら削減されたところも全国で少なくないと報道されています。それでも医療者としての使命感で奮闘している職員に対し、これ以上の負担を強いることはもはや許されることではなく、この国にとってかけがえのない財産を失う恐れすらあると認識すべきです。
ワクチン接種が3月から本格的に開始される予定ですが、現状では、7月までに接種が概ね完了するという見通しは立たないと言わざるを得ません。
こうした状況を勘案し、国民の安全・安心のために、東京オリンピック・パラリンピック開催中止を決断し、コロナ対策に集中する方向に舵を切るよう政府、東京都、大会組織委員会に対し要望いたします。
以上
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