【要望書2021.2.10】2021年度予算案の組み替え 緊急要望書
内閣総理大臣 菅 義偉 様
財 務 大臣 麻生 太郎 様
厚生労働大臣 田村 憲久 様
2021年2月10日
全日本民主医療機関連合会
会 長 増田 剛
(公 印 省 略)
新型コロナウイルス感染症が急激に拡大し、感染者数や重症者数、死亡者数は増加し続け、国民の命と健康が脅かされている。
全国各地で新型コロナウイルス感染症患者の受入病床が逼迫し、同時に他の疾患の医療供給体制の維持が困難になっている。さらに、医療従事者の人手不足と長期戦による疲弊も重なり、日々医療崩壊が進行している。加えて感染力が1.7倍とされる変異ウイルスも国内で相次いで発見されており、今後さらなるオーバーシュートが懸念されるなど、状況は急速かつ深刻さを増して悪化している。
このような背景には、菅政権を含めた歴代政権による医師や看護師数の抑制や感染病床等の削減など、医療費抑制政策が事態の悪化を招いている。さらに、PCR検査の拡充、保健所や医療供給体制の抜本的な強化や財政支援など、感染拡大防止の根幹を支える政策を実行せず、感染拡大のさなかにいのちよりも経済を優先し「Go To」キャンペーンを強行して感染を拡大させた責任は極めて重大である。
菅政権は「第3次補正予算」で一般会計の19.2兆円の追加歳出のうち感染拡大防止策は総額でわずか4.4兆円のみとなっており、医療機関への財政支援もPCR検査の拡充に必要な全額国庫負担の予算もない。さらに持続化給付金や家賃支援給付金は打ち切る一方で、6月末まで期間を延長した「Go To」キャンペーンに1兆円超、大企業を中心とした施策・支援には11.7兆円などを計上している。
今、求められているのは感染拡大を抑え、逼迫した医療・介護事業を支援し、コロナ禍により、継続が困難な事業への支援や、失業などで困窮している国民のいのちを守る手厚い支援である。
2021年度予算案を組み替え、国民のいのちと健康、暮らしを守るための予算を大幅に拡充し、次の事項の実現を強く求めるものである。
要望事項
1.新型コロナウイルス感染症対策
(1)医科、歯科、介護事業所を守れ
① ただちに、すべての医療機関・介護事業所にコロナ禍による収入減への補填を行い、地域の医療・介護体制を支えること。
② 感染拡大防止等支援事業の対象を拡大するとともに、支援金を増額すること。
③ 全ての医科・歯科・介護事業に必要十分なPPEを全額国の負担で支給すること。
④ 地域の医療体制維持、医療従事者確保のため、全ての医療機関に対し、医師、看護師等の医療従事者確保に必要な財政支援を行うこと。
⑤ 各支援制度等の申請手続きを簡素化し、速やかに交付・支給すること。
(2)保健所体制
① 人員体制を大幅に強化し、過酷な労務環境を解消するとともに、地域の公衆衛生の要として保健所数を増やし、体制を強化するための予算を確保すること。
(3)PCR検査
① 高齢者施設・医療機関の職員への定期的検査、感染増加地域での積極的検査を国の財政負担でただちに実施すること。
② PCR検査、抗原検査等の検査・判断料を全額公費負担とし、公費請求額を大幅に引き上げること。
③ 全ての保健医療機関における、医師の判断で実施するPCR検査及び抗原検査等の公費請求を可能にすること。
④ 「地域外来・検査センター」を増やし、関連する全ての費用を国が全額負担し、出務する職員等に十分な給与・出務費を保障すること。
(4)ワクチン
① 副作用による重篤な健康被害について、国が責任をもって把握し、被害者救済に全力で取り組むこと。
② 感染リスクやこれまでのクラスター発生経験などを踏まえ、通所介護や訪問介護等に従事する職員を優先接種対象に加えること。
2.新型コロナウイルス感染症蔓延のなかで、国民のいのち、暮らしを守れ
(1)雇用と暮らし
① 感染の収束及び業の回復まで、雇用調整助成金の特例措置、持続化給付金、家賃支援給付金制度等を継続し、支給要件を緩和すること。持続化給付金は事業規模に応じた金額とすること。
② コロナ禍で一時的に生活保護基準を下回る所得者に、安定した収入が得られるまで、支援金を給付する等、困窮した国民の生活を支える制度を確立し、そのための予算を確保すること。
(2)国民健康保険
① 失業者が国民健康保険料を支払うことが困難な場合は、保険料の納付の如何を問わず、国保証を必ず交付し、無保険者を作らないこと。
② 国民健康保険法77条(保険料の減免)並びに44条(一部負担金の減免)の適用対象を広げ、困窮者の受療権が損なわれることがないよう、柔軟に対応すること。
(3)生活保護制度
① 生活保護申請者への水際作戦をただちにやめること。受給が必要な人が躊躇することがないよう、扶養照会については行わないこと。
② 生活保護制度は、国民の権利であること、扶養照会は行わないこと等、広く国民に周知するよう、厚生労働大臣の責任で、テレビ、新聞、SNS、ラジオなどの手段を駆使して努めること。
以上
(PDF)