【声明2021.01.21】新型コロナウイルス感染症患者病床確保の勧告に応じない医療機関名の公表の撤回を求める
2021年1月21日
全日本民主医療機関連合会
会長 増田 剛
(1)政府により、新型インフルエンザ等対策特別措置法改正と一体に、感染症法の改正案が検討されている。改正案において国と地方自治体の役割・権限の強化に関連し、医療機関への新型コロナウイルス感染症患者の受け入れ病床確保を「要請」から「勧告」とし、「勧告」に応じない場合に医療機関名を公表することが盛り込まれている。
すでに多くの医療機関、医療者は1年を超える緊張と過労状態の中、必死に患者を守るために力を尽くしている。それに対しコロナ用の病床を拡大するために制裁ともとれるような対応をとる改正案に、言葉にならない失望と怒りを覚える。
(2)地域の中で各医療機関は、急性期、慢性期、リハビリテーションなど機能に応じ、住民に身近な入院施設・かかりつけ医機能を発揮している。それは、多くの住民のいのちと健康を守る上で、コロナ禍であってもなくてはならない役割である。コロナ用の病床を拡大する上でも、それらを踏まえて地域の医療機関が十分に議論し、国と自治体はそこで生まれる困難な課題の解決に手を尽くすことこそが必要なことである。
病院名公表という措置はこうした背景も、十分に住民に伝わらず、医療機関に対す誤解も生むことにもなり、コロナ病床の拡大には何らの効果もない。即座に撤回すべきである。
(3)関連して、一部の識者、マスコミなどから公立・公的病院と民間病院の病床の中でコロナの病床数が占める割合を比較し、あたかも民間病院の協力が不足しているかのような意見が出されている。
これは、コロナ患者を受け入れることができる民間病院はすでにコロナ患者を懸命に受け入れている現実、また、施設や人的資源の限界から受け入れの整備が整わない現実を見ない意見である。こうした意見は医療機関を分断し、連携に水を差す暴論でありただちにやめるべきである。
(4)現在、医療体制を困難に追い込んでいるのは、病院、保健所などの体制をはるかに超える感染状況の広がりであり、政府が、科学的知見に基づき強力に政策を実行し感染者数を減少させる以外に解決はない。
また、コロナ禍で大幅な減収に見舞われ経営の危機にある中でも官民問わず、すべての医療機関、医療従事者は、身を削って患者のいのちを守っている。政府の支援金がコロナ受け入れの病院に偏る中、リハビリや慢性期など別の役割で奮闘している医療機関の危機は深刻さを増している。政府が考えを改め、すべての医療機関に対し、速やかに財政支援を行い、万全の対策を行うことを強く求める。
以上
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