【緊急要望書2020.5.29】介護事業所に対する財政支援等の強化を求める緊急要望書
内閣総理大臣 安倍晋三 殿
財務大臣 麻生太郎 殿
厚生労働大臣 加藤勝信 殿
2020年5月29日
全日本民主医療機関連合会
会 長 増田 剛
5月25日、全都道府県で緊急事態宣言が解除されました。しかし介護現場では依然として厳しい状況が続いており、職員は、「感染しないか」「感染させてしまわないか」「感染者が出ると事業を継続できなくなるのではないか」という極度の不安と緊張を強いられながら日々介護にあたっています。日常のケアの場面では、利用者と「密」になることがどうしても避けられず、常に感染のリスクと向かい合わせです。「集団感染が不安」を理由に自主休業に至るデイサービス(短期入所)事業所も増加しています。マスクやガウン等の衛生・防護用品の不足は、介護従事者のこうした不安と緊張をいっそう加速させています。
事業所では3月以降利用者が減っています。利用者の減少は事業所の収益減をもたらし、事業所を継続させていく上で深刻な困難が生じています。このままでは仮に感染が収束しても事業を再開することは難しいとの声も聞かれます。長期化すれば、「介護崩壊」というきわめて深刻な事態につながりかねません。
利用の手控え、事業の縮小・休業などで介護サービスが途絶えることで、病状・状態の悪化、鬱症状や認知症の悪化など利用者に大きな影響が生じています。家族の介護負担が増大し、虐待につながらないか危惧する声もあります。デイサービスの代替えサービスとされている訪問介護では、ヘルパーの体制が厳しく、新たな「介護弱者」「介護難民」が生じている実態があります。
最近は高齢者施設での集団感染が報じられています。高齢の陽性者は入院加療が基本とされていますが、入院の受け入れ体制の問題や本人・家族の事情などにより、介護事業所が感染者の支援をそのままを継続するケースが数多くあります。施設での集団感染の発生は、地域の介護基盤を大きく揺るがすとともに、地域の医療体制を逼迫させ、医療崩壊を引き起こすことにつながりかねません。
また、営業自粛の要請等により、収入が大幅に減少している世帯が増えています。入所費用・利用料など家族から経済的な援助を受けている利用者も多く、サービスの利用を継続させる上で利用者負担の軽減が必要です。
介護現場が抱えている現状の困難を早急に打開するとともに、今後の「第2波」「長期化」に備えた対応が求められています。感染のリスクを負いながら、厳しい職員体制の中で、利用者の生活を懸命に支えている介護事業所、介護従事者を後押しする、財政支援の強化を強く求めます。
<要請事項>
1介護事業所、介護従事者が適切な感染予防・防護策を講じられるよう、政府の責任で、マスク(サージカルマスク)、消毒用アルコール、使い捨てガウン・エプロン・手袋、ゴーグルなどの衛生・防護用品の安定的な確保、供給をはかること
2PCR検査の体制を抜本的に強化し、検査が必要と判断された利用者、介護従事者が迅速に検査を受けられるよう環境を整えること
3介護事業所に対する支援として、
①自治体からの休業要請の有無にかかわらず、すべての介護事業所を対象に、新型コロナウイルス感染症に伴う利用者の減少・休業によって生じた減収分に対する補填を行うこと。当面の緊急措置として、介護報酬の柔軟な運用をはかり、過去の給付実績に基づく介護報酬の概算払いを急ぎ実施に移すこと
②感染対策に伴う新たな支出分(衛生・防護具等の購入、職員の臨時雇用、「密」を回避するための対応等)に対する補填・助成を行うこと
③介護報酬・諸基準について、状況に応じた柔軟な解釈、弾力的な運用をはかること。その周知を徹底し、指定権者によって異なる対応が生じないようにすること
④福祉医療機構等が実施している無担保・無利子の融資制度について、さらなる条件緩和、手続きの簡素化、決定の迅速化等、実効性のある方策を講じること
4感染のリスクを負い、日々不安と緊張の中で介護にあたっている介護従事者に対して特別の手当等の給付、助成を行うこと
5必要な介護サービスを切らさずに提供できるよう、訪問介護員をはじめとする介護従事者を確保するための臨時の手立てを講じること
6介護事業所で感染者が発生した場合の対応・支援として、
①感染者が速やかに入院できるよう医療体制を強化すること
②必要な衛生・防護用品を優先的に供給すること。発症者や濃厚接触者を隔離するための施設整備、備品の確保等に係る費用を助成すること
③感染者や濃厚接触者に対する支援の内容・方法等について、これまで発生した実例等をふまえた具体的なガイドラインを明示すること
④医療専門チームや支援職員の派遣、行政による支援体制の確保等、すべての自治体において当該介護事業所に対するバックアップ体制を確立するよう対策を講じること
7入所費用をはじめとする利用者負担の軽減をはかること。来年8月に予定されている補足給付の見直しの実施時期を延期すること
以 上
(PDF版)