【声明2017.09.01】総合診療領域のプログラム審査の開始にあたっての全日本民主医療機関連合会としての緊急要望
一般社団法人日本専門医機構
理事長 吉村 博邦 様
2017年9月1日
全日本民主医療機関連合会
会長 藤末 衛
新専門医制度の発足にむけての貴職のご尽力に敬意を表します。
8月25日、新しい19番目の領域として発足する総合診療領域の専門研修プログラムの申請が締め切られました。開始されました総合診療領域の審査にあたり、弊会からの要望を3点お伝えします。
審査にあたり十分に考慮いただくよう要望いたします。
記
(要望1)プログラムの審査にあたっての合否判定基準を明確にし、審査の結果合格としない場合は、その判定理由を個々に応募医療機関へフィードバックを行ってください。
(理由) この領域は新しい領域です。プログラム上の不十分なところがあれば、それを修正して再挑戦できるように形成的なフィードバックを行うことが、今後よりよいプログラムを登場させていく力になります。
整備指針の公表が遅れたことに加え、最終盤になって僻地被災地の件など新たな事項が追加され、また締め切り後の28日に新たに「確認のお願い」が発表されるなど、少なくない混乱が生じています。このような経過の中、個々のプログラム基幹病院は、単に合否の判定結果だけ受け取った場合、どこに問題があるのかわからない状況が予想されますので、機構における判定の客観性を担保するという点でも、合否判定基準の明確化と個々の理由の通知は不可欠と考えます。
(要望2)プログラムの審査にあたっては、申請者への必要な助言、修正などの期間を設けながら行ってください。もしそのような時間が確保できないのであれば、概ね外形的な基準を満たしているものはいったん認定をした上で、その後に修正の機会を保障してください。
(理由)8月28日の確認指示に示されるように、整備基準の解釈においても十分な周知には至らない状況です。現在のような混乱のまま判定のみが行われれば、機構のガバナンスが再度問われかねない状況と言わざるを得ません。今回の制度発足にあたっては、すでに担当学会での専門医養成実績がある他の領域においても、相当な期間、申請者からの質問への回答や内容についての相談・助言が行われましたが、総合診療専門医領域においてはそのような期間が設けられないスケジュールとなっております。したがって、申請プログラム個々に必要な助言を行うとともに、小さな部分で外形基準を満たさないなどの事務手続き上の問題は事後の修正を条件にして認定するなどの配慮を行っていただきたい。
なお判定にあたっては、この新しい領域には充足した地域はいまだ存在せず、配置数の勾配が問題となる段階にはありませんので、まずはこれからの地域包括ケア時代を担う医師を輩出するために、地域による上限設定をもうけることなどなく、どの圏域であれしっかりと研修できるプログラムであれば認定をすべきだと考えます。
(要望3)一律に専攻医全員の1年間の僻地被災地赴任をプログラム認定の条件とはせず、内容についても、今後の1年間程度、充実した僻地被災地での研修を準備する期間として充てることを含めての審査とすることを望みます。
(理由)僻地や被災地における研修については、その内容を実のあるものにするためにはさらに検討や具体的準備が必要な部分があり、8月10日付の「総合診療専門研修プログラムについて(お願い)」をもって、一律にプログラムの適格性が審査されることを懸念します。
1年間の僻地あるいは被災地での修練という要件は、僻地や被災地にとっても専攻医にとっても有益なものとすることが大切です。今回のように十分な調整期間もなく僻地や被災地をプログラムに付け加えると、例えば研修環境の十分には整わないところに初期研修修了直後の医師が赴任した場合などに、現実の修練およびその地域住民の受ける医療水準に不具合が生じてしまう可能性があると考えます。指導体制などの研修環境と専攻医の力量を吟味した丁寧な準備を行い、実り多い連携を僻地や被災地と形成することが大切ではないでしょうか。そのためには一定の準備期間が必要なところもあるかと思われます。
また、結婚、妊娠、子どもの誕生などのライフイベントや、親の介護、子どもの教育など専攻医のライフステージを考慮したとき、全員が僻地あるいは被災地に1年間行かねばならないという条件ではエントリーできない医師が少なからず出てくるのではないでしょうか。専門医を養成する制度なのですから、何より地域医療を担う力を身につけることが優先されます。一律に必須条件とするのではなく、例外の存在を認めるべきだと考えます。
以上
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