【声明2017.06.12】バイエル薬品による組織ぐるみの不正行為に厳しく抗議します
2017年6月12日
全日本民主医療機関連合会
会長 藤末 衛
同医療部長 馬渡 耕史
宮崎県の診療所で行われた抗凝固薬に関するアンケート調査に際して、バイエル薬品の社員がカルテを患者に無断で閲覧し、その内容を基にバイエル薬品が論文を作成し、全国での販売促進活動に利用したことが、マスメディアで報じられています。この事件に関する全日本民医連としての見解を表明します。
1.会社ぐるみの行為は極めて悪質で容認できるものではありません
カルテを無断に閲覧されたのは、診療所の医師から経口抗凝固薬を処方されていた患者で、服薬の嗜好や傾向がアンケート調査されました。閲覧されたのは服薬に関する事柄だけではなく、病名などの個人情報も含まれていました。バイエル薬品本社からの指示で3人の社員がカルテを閲覧したとされています。そのうちの1人は、マスメディアからの取材に対して、会社のコンプライアンス室に申し出たが取り上げてもらえず、上司から退社を勧められたと答えています。
バイエル薬品は、得られた情報を基に2本の論文を下書きし、診療所の医師は数ヶ所の文字の修正をしただけで、論文はその医師の名前で2012年と2013年に雑誌に掲載されました。1本目の論文の作成にあたってバイエル薬品に関する利益相反(COI)の記載はありませんでした。2016年に論文は取り下げられますが、バイエル薬品は自社製品に有利な情報を手に入れ、販売を拡大するために組織ぐるみで一連の悪質な行為を行ったとの批判は免れません。
さらにその後の調査で、アンケートに記載された副作用12例を厚生労働省に報告していなかったことが発覚し、同省から医薬品医療機器法に基づき報告命令が出されました。売上のためには患者の安全を後景に押しやるという態度は、製薬会社として許されるものではありません。
2.製薬業界の体質と医療人としての倫理が問われています
ディオバン(ノバルティスファーマ)の論文不正事件は記憶に新しいところです。時期を前後して今回の事件が起きました。国民の保険料と税金で賄われている公的医療保険制度の中で、こうした不正は決して許されるものではなく、繰り返し不正が起きる製薬業界の体質も厳しく問われなければなりません。バイエル薬品には、事実経過を明らかにし再発防止策を含め、社会的な責任を果たすよう強く求めます。
また、患者の同意がないにもかかわらず、バイエル薬品の社員にカルテを閲覧させた医師にも、倫理上の逸脱があったと考えます。医療人は、製薬企業の利益優先の問題に無関心であったり、なれ合ったりすることは許されません。今あらためて全ての医療人がCOIについて理解を深め、患者の人権を優先した判断と行動をとることが求められています。
以上
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