【声明2017.04.12】介護保険「改正」法案の採択強行の暴挙に断固抗議する
2017年4月12日 全日本民主医療機関連合会 会長 藤末 衛
4月12日午後、安倍自公政権は、衆院厚生労働委員会において介護保険「改正」法案の採択を強行した。審議が十分尽くされていない中で、それまでの与野党間の合意を踏みにじり、一方的に審議を打ち切って採択を強行したことに怒りをもって抗議する。国民・高齢者・障害者に重大な影響をもたらす法案であるにも関わらず、地方公聴会も省略し、討論(反対・賛成討論)すら行わない異常なやり方の採択は断じて認められるものではない。
そもそも今回の法案は、性格が異なる31本もの「改正」法をひとつに束ねたものであり、一括して審議、採択すること自体が問題である。しかも具体的な中身がほとんど政省令に委ねられているため、いまだ詳細が明らかにされていない部分も多い。
内容上の問題も多岐にわたる。例えば、「現役並み所得」の利用料3割化が提案されているが、対象となる利用者が果たして3割負担に耐えられるのか検討された形跡はみられない。「自立支援・重度化予防」をスローガンとした「インセンティブ改革」は、要介護認定率の引き下げ競争に市町村を駆り立て、個々の利用者には介護保険からの「卒業」を目標とする「自立支援介護」を強いるものであることが指摘されている。「介護医療院」は、長期療養を担う医療病床の一部削減、介護療養病床の全廃のための新たな受け皿であり、「共生型サービス」は、高齢障害者に対する「介護保険優先適用原則」をいっそう強化する性格をもつ。さらにこの「共生型サービス」の土台となっている「『我が事・丸ごと地域共生社会』実現方針」は、縦割り行政の是正を名目とした「公的支援の効率化」と、本来公的に保障すべきものを住民主体の活動に移し替えていく「公的支援の下請け化」にその本質があり、誰も反対し得ない「共生」の名で、社会保障削減・解体を図る新たな方策として機能する公算が高い。こうした法案の重大な問題が、委員会での審議を重ねるたびに次々と明らかになっている。参考人質疑、首相質疑を終えたからと言って採択の環境が整えられたとは到底言えない。
さらに、前回「改正」による影響の検証を行わずに、新たな負担増・給付削減を国民・高齢者に強いることも問題である。安倍首相は、本会議で「前回『改正』の顕著な影響は確認されていない」と繰り返し答弁した。しかし、私たち民医連の調査結果でも示されているように、一部利用者の利用料2割化、特養入所対象の限定、補足給付の見直しなどによってサービスの利用を減らさざるを得なくなり、そのために家族の介護負担が増えて離職を余儀なくされたり、特養への入所や入所の継続が困難になっているなどの深刻な事態が明らかになっている。新たな見直しの審議をする前に、まず前回「改正」後の検証を真摯に行い、制度に起因する困難を一刻も早く打開するための施策を検討することこそ求められている。
以上から、今回の衆院厚労委員会での法案採択は、到底納得しうるものではない。強く抗議するとともに、法案を委員会に差し戻し審議を尽くすことを重ねて求めるものである。
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