【声明2014.06.19】ノバルティス社の組織的関与及び大学・研究者の責任追及と薬をめぐる不正の再発防止を求める-ノバルティス社元社員逮捕を受けて-
2014年6月19日
全日本民医連会長 藤末衛
2014年6月11日ノバルティスファーマ元社員が、薬事法違反容疑(虚偽効能広告違反)で逮捕された。京都府立医大が実施したディオバンの効果 を調べるための臨床研究で、脳卒中などについて高血圧症治療薬ディオバンの効果が高く見えるように改ざんした容疑である。今回の逮捕により、臨床研究デー タ改ざん事件が、元社員個人にとどまらず、会社として関与していたことが司法の場で明らかになることを求める。
ノバルティスファーマ(以下ノバルティス)のディオバンの売上は、2000年の発売以降、累計一兆二千億円(年間一千億円)にのぼる。ディオバンが、ア ンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)という新薬であるために安価な後発品が参入できず、高薬価で販売されている。年間5千億円といわれるARB剤市 場は、8社7製品が競合し、各社とも「血圧以外にも心筋梗塞や脳卒中にも効果がある」などと、大学研究者に発言させ、競って宣伝に活用している。最近で は、武田薬品のARB剤ブロプレスも、広告に虚偽データを使ったことが判明している。
薬価は、国民の保険料・税金等が原資である。データを改ざんして効果の虚偽を宣伝し、高い医薬品を服用するように仕向け、巨額な利益を上げたことは、断 じて許されない。製薬企業は、高い医療倫理と社会的責任が求められる。ノバルティスは、自ら事実の解明を徹底し、情報公開や防止策を行うとともに、その社 会的な責任を果たすために不当な利益を返還することを求める。政府・厚労省は、そのための法律を整備すべきである。
さらには、アルツハイマー病を研究する国家プロジェクト「J-ADNI(アドニ)」の不正改ざん疑惑や白血病治療薬タシグナの「SIGN研究」へのノバ ルティスの不正関与なども報道されており、製薬業界の利益を優先し人権感覚の欠如した企業体質や医師・研究者の姿勢が問われている。ディオバンの臨床研究 を行った5大学にノバルティスから支払われた奨学寄付金は合計11億円を超えており、製薬企業との癒着構造が、今回の重大な問題を生み出していると考えら れ、製薬企業と大学医学部・病院側との根深い癒着構造の解明と改革が求められる。
特定の製薬会社からの医師主導臨床研究への奨学寄付金の中止など不正を生み出す再発防止策を製薬企業や大学が、自ら実施、是正すること、同時に政府・厚労省は、製薬企業や大学の不正防止策の規制強化を徹底して、行政の責任を果たすことを強く求める。
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