【声明2014.04.23】2014年度歯科診療報酬改定に対する声明
2014年4月23日
全日本民医連歯科部
部長 江原雅博
1.消費税増税分に満たない改定(+0.99%)では、歯科医療が成り立たない。
今回の診療報酬改定は、消費税増税分を考慮すると実質マイナス改定であり、さらに来年10月からの消費税10%が実施されることを考えれば、断固として 容認することは出来ない。前回2012年がプラス改定といわれたが、過去のマイナス分を補えるものではなく、歯科医療を改善させ安全・安心の歯科医療をお こなうにはほど遠い結果となっている。ただちに、再改定を行うことを強く要望する。
2.今改定の特徴と問題点
○前回改定から引き続き、在宅歯科医療の充実や周術期口腔機能管理の充実をはかるため、医科医療機関との連携(医科歯科連携)への評価がなされたこと、生 活の質に配慮した歯科医療の推進として小児保隙装置の保険適応や小児義歯の適応拡大がされたこと、歯周治療用装置の算定要件の見直しされたことなど、診療 の実態や患者の要望にあった改定内容もみられる。これらのことは私たちが「保険でよい歯科医療の実現に向けて」の運動を患者・国民とともに続けてきたこと の大きな成果である。
○しかし、歯科訪問診療2の減点や歯科訪問診療3の新設は、施設における歯科訪問診療を制限 することが目的となっており、患者にとって施設往診の重要性から考えると到底容認できるものではない。施設および集合住宅の訪問診療の撤退を表明する医療 機関も出てきており、このままは、歯科訪問診療を受けにくくなることも予想される。本来、在宅歯科医療推進のためには、時間要件の撤廃、訪問人数による点 数格差の撤廃、施設基準の緩和など、治療から口腔ケア・口腔機能保全へ向かっている実態にあった内容にすべきであり、居住条件にかかわらず等しく提供でき るよう再改定を要望する。
○新しい技術の導入として、歯科用CAD/CAM装置を用いた歯冠補綴物の保険導入がなされた。その材料の評価・補綴管理料との関係、補綴物作製が可能な技工所が身近にあるかどうかも含め、ガイドラインの整備など安全・安心に提供できるよう求める。
○今回改定でも基礎的技術料の抜本的引き上げは見送られた。在宅を中心に訪問歯科診療を実施 している歯科診療所の評価が施設基準の届出によること、歯科訪問診療における20分要件については、形を変えたものの存続したこと、同一建物の複数患者へ の歯科訪問診療料の大幅引き下げられた。また、従来の義歯管理料B、Cが一本化され新たに歯科口腔リハビリテーション料1としての評価となったが、将来、 介護保険給付の対象とされることが予想され、義歯そのものがリハビリ危慎として扱われる可能性がある。そのため、介護保険とのからみで将来的に在宅におけ る義歯の位置づけが大きく変わる可能性が出てきたことなど、問題点が散見される。今後実施状況も含め注視すべきである。
○本来、居住の場によって受けられる在宅歯科医療の内容や質が差別されるのはあってはならな い。しかし、同一法人である医療機関の病院等の入院患者を歯科保険医療機関が歯科訪問診療を行った場合は、訪問歯科診療やそれに関わる加算などが算定でき ない「特別な関係」規定による制限が今回改定でも残った。しかも、新たに周術期口腔機能管理において、医療機関が異なっても「特別な関係」であれば医科側 の情報提供は算定できない状況が生まれた。医科歯科連携による地域包括ケアを進めるにあたり「特別な関係」による制限は、医科・歯科連携に支障をきたし、 これらの医療機関にかかる患者に深刻な影響を与えることが考えられ、早急にこうした矛盾の解消を要望する。
3.さらなる歯科医療の拡充のために保険診療の充実を
今回、医科診療報酬改定において、急性期病床の大幅削減を目的とした再編などを中心に、「病院から在宅へ」が診療報酬から強引に誘導された。今後、歯科 医療が果たす役割は、誤嚇性肺炎の予防など口腔ケアをはじめとした口腔機能管理が求められる。
また、地域包括ケアが推進される中で、いつでもだれでもどこでも安心して必要な歯科医療が受けられるためにも、予防への保険給付、歯科医療費の総枠拡大と同時に患者の窓口負担を大幅に軽減することを要望する。