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声明・見解

声明・見解

【アピール2014.02.26】国民を医療から追い出し、介護は打ち切る、「医療介護総合推進法案」の撤回をもとめ、幅広い国民的共同を進めよう

2014年2月26日
全日本民医連会長 藤末 衛

 安倍政権は、昨年成立した「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する 法律(以下、プログラム法)」の具体化として「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案(以下、医療介護 総合推進法案)」を今国会に上程した。法案の狙いは医療費抑制のために安上がりな医療・介護提供体制をつくり、国民への大幅な負担増と必要なサービスを切 り捨てることにある。小泉政権時代の医療・介護「構造改革」を一層推し進めるものである。

 問題は、第一に、病床機能の再編を、実態を無視して上から強引に進めようとしていることで ある。そのため都道府県に権限を持たせ、必要な事業についてあらたな「基金」をつくり、その財源は消費税の増収分をあてるとしている。都道府県からの勧告 に従わない病院、診療所にはペナルティが課される。あわせて財源とサービス提供体制を一体に推進するために国保の都道府県化が進められている。このことに より国保の改悪がいっそう進められる危険性が高い。
 第二に、介護保険制度始まって以来、最悪の改悪がおこなわれようとしていることである。具体的には、1)予防給付のうち利用者が多い訪問介護、通所介護 を給付体系から切り離し、市町村が実施する事業に丸投げ。2)特別養護老人ホームの入所対象を要介護3以上に限定化。3)一定以上所得者(年金収入で単身 280万円)の利用料負担を2割に引き上げ。4)低所得の施設入所者に対する居住費・食費負担軽減制度(補足給付)の要件を見直し、資産要件の新設などを 盛り込んだことである。
 第三に、「医療事故調査の仕組み」や「特定行為を行う看護師の研修制度の創設」など、性質の違うものをセットで盛り込んでいる。民医連は一貫して「医療 事故を調査する中立・公正な第三者機関の設立」を求めてきたが、法案に示されている内容には不明な点が多く、個別に充分な審議が必要である。
 第四に、異常な手法の問題である。それぞれに重大な内容を含む法案を「医療と介護は一体のもの」という強引なこじつけで抱き合わせにし、予算を伴うもの と一本化し、予算編成に合わせた日程で一気に成立させようとしている。まさに数にまかせた「やりたい放題」の手法である。国民の生命に直接かかわる重大か つ賛否の分かれるような複数の案件を、ひとまとめにあげてしまうやり方は、国会を軽視し審議を形骸化させるもので断じて許されるものではない。

 今回の法案は、重大な国民のいのちと健康への挑戦であり、私たちは医療介護総合推進法案そのものに反対の立場を表明する。実態とかけ離れた今回の法案は内容が知れ渡れば、必ず全国で大きな怒りを呼び起こすであろう。すでにこうした悪法に反対する共同が広がりつつある。
 4月24日には勝田登志子氏(認知症の人と家族の会副代表)、本田宏氏(済生会栗橋病院院長補佐)、川島みどり氏(日本赤十字看護大学客員教授)らを呼 びかけ人として「輝けいのち!4.24ヒューマンチェーン(国会包囲)行動」が行われる。全国の医療、介護関係者や患者・利用者・家族などに呼びかけ 5000名以上の参加で大きく成功させよう。

 全日本民医連は、医療費抑制のための安上がりな地域包括ケアではなく、公的責任で医療・保 健・福祉が切れ目なく保障され、誰もが健康で、最後まで安心して住み慣れた地域で暮らし続けられる「地域包括ケア」をめざしている。憲法25条に基づき、 人権としての社会保障を実現する医療・介護提供体制の構築を国に強く求めるとともに、その実現のために共同を広げる決意である。

(PDF版)