【声明2013.12.20】被爆者の思いと司法の判断に従わない原爆症認定の審査基準の再改定に抗議する
2013年12月20日
全日本民主医療機関連合会
会長 藤末 衛
厚生労働省は、2013年12月16日に開催された第151回の原子爆弾被爆者医療分科会において、2009年6月22日に改定された『新しい審査の方針』(原爆症認定の審査基準)を再改定した。
もともと今回の再改定は、厚生労働省の原爆症認定のあり方をめぐって2003年4月から始まった「原爆症認定集団訴訟」が、全国で相次いで勝訴判決して いく中で、その裁判を終結させるために、2009年8月に麻生総理大臣・自民党総裁と日本原水爆被害者団体協議会(被団協)との間で交わされた「確認書」 に基づいて進められてきたものである。
しかし今回の再改定では、非がん疾患においては、悪性腫瘍より狭く限られた範囲に設定されている。しかし非がん疾患においても、放射線の影響に「しきい 値」がないとするのが、現在の科学的知見の到達点である。だからこそ司法は、これら非がん疾患を積極的に認定するという姿勢で判断してきた。
したがって、非がん疾患と悪性腫瘍との区別を取り除くこと、つまり非がん疾患に対し「放射線起因性が認められる」という文言が付けられているこれまでの 基準を改め、単純にこれを削除し新たな制限を設けないこと、そのことこそがこれまでの司法判断と行政認定の乖離を埋めることになるはずであった。
今回の基準の改定は、こうした残留放射線の影響、そして被爆者の実態や思いを踏まえて認定してきた司法判断を全く無視するものである。厚生労働省は、裁判所の基本的な姿勢を受け入れ、判例の趣旨に沿って司法判断と行政認定の乖離を埋めるべきである。
また、被爆者にとっては原爆被害の実態に反しているため、現在係争している裁判を継続せざるをえないうえ、さらに多くの裁判を被爆者に強いることにつながるものである。
現在の科学の到達点や多くの裁判所の判断に反する内容であり、強い抗議の意思を表明する。そして認定基準が被爆者の実態に見合う再度の改定を求めるとともに、認定制度の抜本的な改善が行われることを強く求めるものである。
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