【声明2013.08.07】社会保障制度を解体し、いのちをないがしろにする社会保障制度改革国民会議報告書は撤回せよ。
2013年8月7日
全日本民主医療機関連合会会長 藤末衛
社会保障制度改革国民会議(会長=清家篤慶應義塾長)は、消費税増税と一体で実施を狙う社会保障「改革」についての最終報告書をまとめ安倍首相に 提出した。報告書は、医療・介護、年金、保育の全分野で給付抑制と負担増ばかりが目立つ内容で、消費税増税が10月にも正式決定されれば、税と社会保障の 双方で国民に負担増が押し寄せる。また社会保障制度改革推進法にもとづいて検討された社会保障制度の「改革」方向は、社会保障への国の責任を棚上げにし、 「自助」を原則とする制度への変質を目指すもので、社会保障の解体へと導くものである。全日本民医連は、報告書の撤回をはじめ、負担増・給付削減の「一体 改革」路線の転換を強く求める。
第一に、報告書は、自助を基本としながら、家族と共助が自助を支える仕組みをつくるとしたうえで、自助や共助で対応できない困窮などの場合にのみ受給要 件を定め、必要な生活保障を行う公的扶助、社会福祉などの公助が補完すると述べている。これは憲法25条をはじめとした国民の権利と国の責務を棚上げし、 社会保障そのものを解体に導く宣言であり、認めるわけにはいかない。
そして仕組みづくりには、「徹底した給付の重点化・効率化が必要」としている。「自己責任」を原則に、徹底した給付の抑制、削減、限定化をねらうものであり許されない。
第二に、これまでの社会保障給付は「高齢世代中心」だったと一方的に決めつけ、高齢者の負担強化と給付削減を提起している。とくに医療では、70歳から 74歳の患者負担の2割への引き上げの早期実施、入院給食の自己負担増等を提起。また、「フリーアクセス」を見直し、「必要な時に、必要な医療に(しか) アクセス(できない)」という仕組みに切り替え、すべての患者の受診を制限しようとしている。具体策として、紹介状のない大病院の受診者に定額負担を導入 することや医師に医療費を抑えるゲートキーパーの役割を押しつけようとしている。また、公費削減を目的として国民健康保険の運営主体を市町村から都道府県 に移行する方針で、国保保険料(税)の高騰が予想される。
介護保険では、要支援者(約150万人)を介護保険給付から切り離す、特別養護老人ホームへの入所者を要介護3(想定)以上に限定するほか、一定以上の 所得のある利用者の負担を引き上げるなど徹底した給付削減と負担増を盛り込んだ。年金ではマクロ経済スライドを毎年実施し、実際の年金給付額をカットし続 けることや高所得者の課税強化を打ち出した。さらに支給開始年齢のさらなる引き上げについて「速やか」な検討開始を求めている。保育でも公的責任を投げ捨 てる新システムの推進や営利企業の参入拡大などが掲げられた。
第三に、“消費税増税は社会保障充実のため”という「一体改革」のウソが明白となった。また、報告書は民自公の3党合意により強行された推進法が根拠で あり、あらためて推進法の危険性が明らかとなった。消費税増税を中止し、推進法を廃止して「一体改革」の転換を強く求める。まっさきに報告書を撤回するこ とを要求する。
以上