【声明2013.06.14】子宮頸がんワクチン接種開始3.5年を経過した現時点での見解
2013年6月14日
全日本民医連第40期第17回理事会
<はじめに>
我が国での子宮頸がん(HPV)ワクチン接種は、2009年12月に開始され3.5年が経過した。この間ワクチン接種が普及し、定期接種化と公的支援の 運動が行われ、2013年3月29日の参議院本会議で4月1日から定期接種化させることが可決成立した。全日本民医連産婦人科医療委員会は2010年9月 17日に「子宮頸がん予防とHPVワクチンに関する現時点での見解」を発表し、安全性が未確立であることと、十分なインフォームドコンセントの必要性と同 時にがん検診の重要性を指摘した。この見解は今日でも妥当と考えているが、接種数の増加に伴い有害事象が報告されており看過できない問題と考える。厚生労 働省は6月14日、「積極的な推奨を一時的に差し控える」と発表した。今回現時点での民医連の見解を発表する。
<子宮頸がんワクチン>
子宮頸がんのほとんどがHPV感染に起因することから、HPV感染を予防するためにワクチンが開発された。日本産婦人科学会・日本小児科学会・日本婦人 科腫瘍学会は2009年10月16日付でワクチン接種の普及に関する合同のステートメントを発表し、11~14歳の女子に対する接種を強く推奨し、同時に 子宮頸がん検診の重要性も指摘した。副作用については「ワクチン接種の主な副作用は局所の疼痛・発赤・腫脹などであり、このワクチンに固有の重篤な副作用 はきわめて少ない」と述べており、同年12月に日本でも販売が開始された。
<接種開始以降の健康被害>
米国のワクチン有害事象報告システム(VAERS)においては、サーバリックス、ガーダシル合計で2013年1月13日の時点で28,137例の有害事 象報告があり、そのうち死亡124名、未回復有害事象5,643例、深刻な有害事象3,847例が報告されている。症例で多くみられるのは失神だが、死 亡、障害の残った未回復症例では、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、痙攣、ギランバレー症候群や末梢神経障害、脱力などの筋障害、全身性エリテマトーデス などである。
日本国内においても子宮頸がんワクチン接種後の有害事象の報告が多くなっている。2013年3月には被害者の会が結成され、4月8日に被害者から嘆願書が厚生労働大臣宛てに提出された。
日本産婦人科医会はサーバリックス接種7日後に複合性局所疼痛症候群(CRPS:complex regional pain syndrome)が示唆された事例へのコメントを述べている。
「CRPSは、ワクチンの成分によっておこるものではなく、外傷、骨折、注射針等の刺激がきっかけになって発症すると考えられています。背景因子は未だ不明です。
本ワクチン接種後にCRPSを発症したと考えられる事例は本症例を含め、本邦では3例が報告されています。サーバリックス2例、ガーダシル1例です。本 邦においては、サーバリックスは現在までおよそ684万本、またガーダシルは144万本が接種されていると推定されており、CRPSの発症頻度は極めて 稀」との見解である。
また、子宮頸がん征圧をめざす専門家会議、日本対がん協会、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本婦人科腫瘍学会、日本小児科学会、日本小児科医 会、VPDを知って子どもを守ろうの会は合同で「子宮頸がん予防ワクチン適正接種の促進に関する考え方」(2013.4.3)を発表し、今後の適正な定期 接種を求めている。
薬害オンブズパースン会議は「ヒトパピローマウイルスワクチン接種に関する当会議の見解」(2010年11月16日)で自己決定権を保障する立場を表明している。
これまで民医連の事業所での重篤な副反応報告は、現時点ではない。
<現時点での子宮頸がん予防に関する民医連の見解>
基本的な見解は、2010年当時の見解と大きく変わるものではないが、3.5年を経過し重篤な有害事象が報告されていることを鑑み以下の見解を表明する。
(1)子宮頸がんワクチンが実施されてから3.5年しか経っていない時点でのがん予防の有用性についての評価は未だ困難である。効果の持続期間や安全性に ついても今後の継続的な検証が必要である。特に有害事象の集積と解明に重点を置くことと十分な情報公開を国と製薬会社に求める。
(2)国と製薬会社は、接種後の有害事象により重篤な健康障害が発生した方々への補償救済制度に基づく医療補償や本人・家族への心身ケアなど十分な支援を行うべきである。
(3)国とワクチン接種に関連する学会は、接種を国民や医師の「自己責任」にすることのないように、今後の方針を早急に確立することが求められる。
(4)民医連の医療機関は、ワクチン接種による重篤な有害事象に関する結論がでるまでは、国が現在「積極的な推奨を一時的に差し控える」という見解を出し ていることやワクチンの効用と現時点での有害事象について十分に説明する。希望があり接種した場合はその後の健康状態の把握に努める。
(5)子宮頸がん予防の観点からは、ワクチン接種の有無に関わらずがん検診が不可欠である。本邦での検診率が極端に低い現状では、啓蒙活動及び子宮頸がん 検診の間隔の見直しと無料化、検診を受けやすい環境を整備することが検診率向上のために必須である。特に若い世代(希望すれば10歳代であっても)の検診 を充実させることと、性感染症としてのHPVウイルス感染に関する正しい知識の普及が求められる。
以上
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