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声明・見解

声明・見解

【声明2013.05.17】国民の申請権を侵害し、生きる権利を奪う「生活保護法改定法案」は廃案しかない

2013年5月17日
全日本民主医療機関連合会
会長 藤末 衛

 安倍内閣は、本日「生活保護法改定法案」(以下改定法案)を閣議決定した。この法案は、生 活困窮に陥った国民の最後のセーフティネットである生活保護申請に大きなハードルを設けるなど、生活困窮者を拡大し、国民の生きる権利を奪うものである。 以下、改定法案についての問題点を指摘し、廃案を求める。

 改定法案は、申請時に「要保護者の住所及び氏名」に加え「要保護者の資産及び収入の状況(生業若しくは就労又は求職活動の状況、扶養義務者の扶養の状況 等を含む)」、「厚生労働省令で定める事項」を記載した申請書を提出しなければならないとし、また添付も義務付けている。緊急に保護を必要とする生活困窮 状態であっても申請時にすべての書類がなければ申請できず、窓口でシャットアウトできるようになる。要保護状態にあるのに、保護を受けられない、それはい のちの危険を意味している。直近の埼玉地裁判決などにみられるようにすでに違法となっている「水際作戦」を、条文に入れ合法化している。2006年5月北 九州餓死事件、2012年1月札幌市白石区姉妹餓死事件など、不適切な就労指導等により申請を受け付けない「水際作戦」は痛ましい事件を引き起こしてき た。また2011年3月の北九州小倉北区の申請拒否による自殺事件の判決では申請拒否について違法性を認め、要保護状態であれば口頭による申請を広く認め た。現行法24条も申請時に要否判定に必要な書類の提出は義務づけていない。
 改定法案は、現行生活保護法が必要としていない扶養義務について、要保護者の扶養義務者、その他の同居の親族等に対して報告を求めることができるとして いる。また過去に生活保護を利用していた者の扶養義務者(親子、兄弟姉妹)に対しても同様に官公庁、年金機構、銀行など洗いざらい調査でき、勤務先へも照 会できるとしている。現行の生活保護法では、扶養義務者の扶養は保護の要件でなく、優先関係にあり、仕送り等の扶養がなされた場合に収入認定しその分の保 護費を減額するものである。それは生活保護が社会保障制度であり、家族の自助、相互扶助による制度ではないからである。国民の中に貧困が広がる中、生活保 護を利用しようとしている者の親族もまた生活に困窮していることは多い。扶養を強要されるようなこととなれば、事実上「水際作戦」以上に、保護が必要な状 態であるのに申請を断念するケースが増加する。
 その他にも、後発医薬品を可能な限り使用を促すと明文化し、事実上の強制と生活保護受給者の自己決定権を否定することに通ずること、「健康の保持・増 進、生計の把握」など被保護者に生活上の責務を一方的に負わせていること、不正受給があった場合に保護金品から徴収することを認め、保護金品の差し押さえ 禁止を定めた規定に違反することなど重大な改悪を含んでいる。
 今回の改定法案は、格差と貧困が拡大し、国民生活の困窮が増している中、国の責任で人間らしい生活を援助すべき時に、申請そのものを困難にするよう法を改定する大改悪である。
 全日本民医連は憲法25条を否定するこの改定法案の廃案を求めるとともに、国民の生活保護請求権を守り、国民の生存権を断固として守るために全力をあげてたたかう。

以上

(PDF版)