【声明2013.04.19】日本の公的医療保険制度を破壊するTPP参加は断固阻止しなければならない
2013年4月19日
全日本民主医療機関連合会
会長 藤末衛
安倍首相のTPP 交渉参加表明以降、TPPへの参加は既定路線であるかのようにいわれ、7 月、9 月の交渉会合を経て年内に協定を結ぶ見込みとされている。しかし、このまま交渉参加を進めることは、日本の将来に大きな禍根を残す。
日本政府が発表した4/12 の日米事前協議概要は、米通商代表部(USTR)の発表を意図的に省略し、国民生活のあらゆる分野に重大な影響を与える「保険」や「知的財産権」、「政府 調達」などについてアメリカの要求を過少にみせかけている。国民に事実を隠してまでTPP参加を進めようとする安倍政権の姿勢は国を売り渡すに等しく、強 い怒りを覚える。
とりわけ医療の分野における「保険」の問題は、日本が世界に誇る公的医療保険制度を縮小・変質に導き医療を破壊するもので、このまま交渉を続けることは 大変危険である。しかも安倍政権が財界と歩調を合わせ、TPP参加の動きと軌を一にして「成長戦略」を推し進めようとしていることは重大である。
TPP参加によって医療の市場原理が加速することは明らかである。混合診療の解禁や、医薬品や医療機器価格の規制緩和による医療費の高騰、自己負担の増 大で公的医療保険のカバーする範囲を狭めて、そこに民間保険産業や営利企業が進出する構造である。現に、TPPへの参加を前提にして安倍政権のもとの産業 競争力会議が発表した報告書では、医療・介護の自己負担の増大(軽度の医療は7割~全額負担、70 歳以上の窓口負担を2 割に、軽度デイサービスは全額負担など)、その自己負担分を民間保険でカバーする、民間営利法人の自由度を広げる、などの内容が盛り込まれている。同時に 経済同友会も、70 歳以上の医療費窓口3 割負担を提案している。TPP・成長戦略と消費税増税を含む社会保障削減が、悪魔のトライアングルとして国民を襲おうとしている。
これでは国民皆保険制度が実質的に空洞化し、医療に格差に広がり、結果的に国民全体の健康度は低下してしまう。日本の医療は映画「シッコ」にみられるよ うなアメリカ型の医療に限りなく近づくことになる。現に米韓FTAによって、韓国では63 もの国内法を変える必要性に迫られ、公的病院の存続が危ぶまれる事態がおこっている。
日本の医療がOECD諸国に比べて少ない医師数、看護師数にもかかわらず、効率性、アクセス性、平均寿命や乳幼児死亡率などで高い水準を維持しているの は、憲法25条にもとづき医療に非営利原則が貫かれ、国民皆保険制度が守られていることが大きい。その理念が医療従事者の献身性を支えている。医療が儲け の対象と化してしまえば、医療従事者の志気・モラルは低下し、日本の医療提供体制は破壊されてしまう。全日本民医連は3 月に、全国の病院にTPP参加に反対する賛同を呼びかけた。多くの病院から、医療が営利市場化し皆保険制度が危機に瀕することを危惧し、賛同の返事が多数 届いている。
いつでも、誰でも、どこでも安心して必要な医療を受けられるために、日本の医療の非営利原則、公共性、そして公的医療保険制度を破壊するTPP参加は断固 阻止しなければならない。そのために私たちは全力をあげる決意である。