【声明2013.01.19】意図的な生活保護基準引き下げ案を撤回し、権利としての生活保護制度の充実を求めます。
2013年1月19日
全日本民主医療機関連合会
会 長 藤末 衛
厚生労働省社会保障審議会生活保護基準部会は、多くの委員から異論が出されているにも関わ らず、低所得者層の生活実態と比較して生活保護基準が高くなっている旨の報告書をまとめました。報告を受けて田村憲久厚生労働大臣が生活保護基準を「全体 として引き下げる」と発言したこと、厚生労働省が生活保護水準引き下げの調整に入ったことは、生活保護受給者と低所得者層の生活実態を全く無視したもので あり、絶対に許すことはできません。
報告では、夫婦と18歳未満の子が1人または2人の世帯、20~50代の若年単身世帯への 生活保護費支給額が、低所得者世帯の支出を上回っているとされました。しかし、生活保護基準以下の生活をしている人口の2割程度しか生活保護を受給できて いない現在の日本で、低所得者の支出額と生活保護費支給額を比較しても、生活保護基準引き下げの根拠にはなりえません。
比較対象とされている低所得者世帯(年間収入階級第1・十分位層)の多くは、生活保護を受けることもできず、生活費を切り詰めて生活しています。医療費 が支払えず、受診をためらい重症化、死亡される事例もあります。生活、仕事に必要不可欠な自動車を手放すことになるのではないかと、生活保護申請できない 人もいます。生活保護受給が罪であるかのような世論が作られ、親族に迷惑がかかることを恐れて申請できない人もいます。「健康で文化的な最低限度の生活」 さえ保障されていないのが、日本の低所得者の実情です。
今回の検討で、60歳以上の高齢者世帯については生活保護費支給額が低所得者層の支出と比較して低くなっているとされました。2006年に老齢加算が廃 止されて以来、「人間らしい生活」が送れない状況が続いており、老齢加算廃止の取り消しを求める「生存権裁判」が全国各地で提訴されていますが、今回の検 討結果は老齢加算廃止が誤った政策であったことを示すものです。ただちに老齢加算を復活して、高齢者の「人間らしい生活」を守る責任が国にあります。
日本の生活保護受給者は2012年には213万人を超え、国会審議やマスコミ報道で生活保 護バッシングが広がりました。自由民主党は2012年の政権公約でも生活保護費給付水準の1割カットを掲げました。生活保護予算が国や地方自治体の財政を 圧迫しているとして、生活保護基準の引き下げが議論されていますが、生活保護を受けることが罪であるかのように世論を誘導して、生活保護基準を引き下げる 政策は、国民のいのちと生活を守る国の責任を放棄するものです。生活保護予算の削減ではなく、すべての人に生活保護基準以上の生活が保障されるよう制度改 善こそされるべきです。
全日本民医連は、憲法で保障された「いのちの平等」を貫き、いのちと健康を守る立場から生活保護制度の改悪を許さず、充実のためにたたかいます。