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声明・見解

声明・見解

【2012.07.23】震災瓦礫の処理についての要請

経済産業大臣  枝野 幸男  殿
環境大臣    細野 豪志  殿

2012年7月23日
全日本民主医療機関連合会
会 長   藤末  衛

 東日本大震災・福島第一原発事故から1年5ヶ月が経とうとしているが、原発事故の収束と復旧・復興は遅々として進んでいない。その要因の一つに瓦礫処理が進まない問題がある。
 被災3県で2200万トンの瓦礫のうち、政府は岩手・宮城の瓦礫400万トンについて広域処理をお願いするとしている。しかし、放射能汚染瓦礫を受け入 れることに対する不安から、広域処理も進んでいない。2012年7月現在、実際に広域処理した瓦礫は6自治体で106万トンにとどまっている。「広域処理 ありき」の政策が、むしろ瓦礫処理のテンポを遅らせたのではないかと懸念する。
 地震・津波は自然災害であるとしても、引き続き起こった福島第一原発事故は国会事故調が指摘するように、明らかに「人災」である。国と東電の責任で、ア スベストやPCB、ダイオキシン、放射能に汚染した震災瓦礫を計画性をもって速やかに処理することを要請する。

1.「広域処理ありき」の政策をあらため、震災瓦礫は国と東電の責任で速やかに処理をすること
 放射能は、集中して管理する必要があり、拡散してはならないのが原則である。国の責任で、現地にセシウム回収型の焼却炉を多数建設し、速やかに処理することを求める。
 広域処理は輸送費などコストが高くつき、無駄が多い。1トンあたりの処理費プラス輸送費は、現地処理では約2万円、東京で6万円、九州で約10万円と言 われている。また東京都では、搬入予定の瓦礫処理を受け入れる元請け企業は、東京電力が95.5%の株式を保有する東京臨海リサイクルパワーであったな ど、利権絡みの懸念がぬぐえない。さらに国は、広域処理の予算1兆円分をすでに大手ゼネコンに発注しているなど、広域処理では大手ゼネコンの利益にしかな らない。逆に現地処理によって地元の雇用確保、経済の活性化にも貢献することができる。
 瓦礫処理の遅れは、全国で受け入れの合意ができないためだと一般的には思われているが、このような「広域処理ありき」の政策が、瓦礫処理を遅らせている と言わざるをえない。国と東電は、国民の「被災地を助けたい」という善意を逆手にとった「広域処理ありき」の政策をあらため、責任をもって速やかに瓦礫処 理を進めるべきである。

2.既存のクリアランスレベル(Cs137で100Bq/kg)を遵守すること
 国は、もともとCs137で100Bq/kgであるクリアランスレベル(原子力施設から発生する金属やコンクリート等が、再利用又は廃棄物として埋め立 て処分された場合に、人体への影響を考慮した18経路の被曝計算結果から設定したもの)を8000Bq/kgに引き上げた。その根拠は、原子力安全委員会 が23年6月に出した「考え方」(処理作業者が受ける線量を1mSv/年、周辺住民が受ける追加線量を1mSv/年、埋め立て後の周辺住民の追加線量は 10μSv/年)によるが、これはまったく違う考え方をもちだしてきたもので、容認できるものではない。
 既存の基準で不都合が生じれば、都合のいい基準値に書き直し、「安全」とする国の姿勢は、事故後この間、一貫している。これではとても、国民は国を信頼 することはできない。政治的判断で恣意的に許容レベルを引き上げるのではなく、既存のクリアランスレベルを守って処理を進めるべきである。

3.住民の健康を守ることを第一に、徹底した情報公開を行うこと
 瓦礫の放射線量、焼却中の排気ガスの放射線濃度、焼却灰の放射線量などについて、情報公開を徹底することを求める。

(PDF版)