【声明2012.06.28】核の軍事利用に道を開く「原子力基本法」の改悪の撤回を求める
2012年6月28日
全日本民主医療機関連合会
会 長 藤末 衛
福島第一原発事故は、国内に止まらず世界中に放射性物質をまき散らした最悪の環境汚染であ り、1年4ヶ月経っても放射性物質は出つづけ、未だ放射性セシウムは1時間当たり1000万ベクレルも放出されている。今、政府がすべきことは、直ちに事 故を収束させるとともに、すべての原発を廃止することである。合わせて原因究明を急ぐべきである。
にもかかわらず6月20日、政府は原発再稼働を前提に、原子力規制委員会設置法の付則で「原子力の憲法」とも言われる原子力基本法の骨格となる二条に 「安全保障に資する」目的を追加した。この変更内容は衆議院通過後の6月18日の時点でも国会のホームページにも掲載されておらず、国民の目にふれない形 で、まともな審議もなしに重大な変更が行われた。変更の手法は、公正さに欠けるもので、政府は付則を早急に撤回し、手続きをやり直すべきである。
今回の変更の対象となったのは「公開・民主・自主」をうたった原子力基本法二条という重要条項である。変更は原子力の研究や利用を「平和の目的に限り、 安全の確保を旨として、民主的な運営の下に」とした原子力基本法二条に一項を追加。原子力利用の安全の確保は「確立された国際的な基準を踏まえ」としつ つ、「我が国の安全保障に資することを目的として」行うとした。
この「設置法」は6月15日に衆院環境委員長名で国会に提出され、委員会・本会議で即日可決された後、参院に送られ、その日の午後に趣旨説明が行われ た。その後、参考人質疑もなく、わずか6日間で成立した。このような重要な原子力基本法の変更が、設置法の付則という形で、より上位にある基本法が簡単に 変更されてしまうことは断じて認められない。
日本の軍需産業と米国からの圧力により、政府は昨年末に武器輸出三原則を緩和し、他国との武器共同開発と輸出に道を開いた。このような状況のもと、原子 力利用の安全の確保について「安全保障に資する」との文言が挿入されたことは、核の軍事利用につながる懸念がぬぐえない。事実、韓国のメディアがいち早く 「日本が法的に核武装の道を開いた」と核の軍事利用への憂慮を伝えた通りである。
全日本民医連は、綱領で「人類の生命と健康を破壊する一切の戦争政策に反対」することを掲げており、すべての原発の廃止と再稼働の中止、そして今回の原子力基本法の改悪の撤回を強く求めるものである。
以上