【2012.02.04】妊婦や子どもたちを放射線被曝から守り、健康で安全な未来を保障するため、いましなければならないこと
2012.2.4
全日本民主医療機関連合会
会 長 藤末 衛
同 緊急被曝事故対策本部
本部長 小西 恭司
はじめに
福島第一原発事故の結果、空気中に放出された放射性物質とくにヨード131とセシウム 134セシウム137による土壌、環境の汚染、メルトダウン・メルトスルーによって汚染水として海水中に流されたその他の放射性物質とくにストロンチウ ム、プルトニウムによる海洋汚染、魚介類の汚染、などによっても住民は様々な形の被曝をうけました。特に水道水、野菜類、母乳等を通じての子どもたちの甲 状腺被曝は、政府と東電による不適切な情報管理が背景にあると見ざるを得ません。
また計画的避難区域外の地域においても、ホットスポットをかかえたなかでの生活であり、不安は消えません。
特に子どもや妊婦ついては、感染症対策、精神的な影響へのケア、放射線被曝の回避など、総合的対策は極めて不十分で遅れており、昨年9月27日に学術会 議の名前で「東日本大震災とその後の原発事故の影響から子どもを守るために」との提言も出されていますが、その進捗は明確ではありません。
他方、被曝線量と予想される健康被害との関係に関して、必ずしも見解が一致しているわけでもありません。チェルノブイリ原発事故による住民の健康への影 響については、こどももふくめて甲状腺癌の増加だけであり、低濃度汚染地域では放射線被曝に起因する明らかな健康被害はないとする報告の一方で、小児にお いても健康影響を示すとの報告も見られています。わたしたちは、低線量被曝や内部被曝については十分な知見が無いこと、そして小児の放射線感受性は高いこ とにも留意し、汚染対策に関しては住民の安心レベルを最大限追求することを求めます。ICRPは長期的には一般住民の年間被曝を1ミリシーベルト以下とし ています。食品による内部被曝については、より厳しい食品中放射性物質の制限等を念頭においてなされるべきと考えます。
私たちは
1)今後の被曝の可能な限りの低減と除染対策、2 )食品汚染の程度の正確な把握と規制値を超える食品の除外対策、 3)被曝線量の正確な把握と 健診等今後の健康管理についての十分な対策が必要であることを踏まえて、国に対して次のように要求提案します。
<国に対する要求>
1.子どもたちをが、安全に健康に遊び学べる場所空間を確保して下さい
(1)保育所、学校の汚染状況を明確にし、除染をすすめ、除去表土の保管についても安全を確保してください。国は責任をもって教育環境の除染と安全確保 に、予算をたて、年間1ミリシーベルト以下を目標にするよう除染して下さい。
(2)地域で自主的に除染作業を行う場合、専門家の援助ができるような体制を組んで下さい。
2.子どもたち、妊婦が食品を安全に選べるようにください。
(1)日常的に摂取する、水道水、米、小麦、卵や牛乳に加えて肉や魚、野菜・果物について消費者サイドでも線量測定のできる体制を確保してください。
(2)学校、保育所等での児童の給食調理の現場においても、入荷食材の線量確認、及び、調理後の線量確認も可能となるように体制をとってください。
(3)少なくとも、水道水、食材についてはセシウムを、魚介類については、セシウム、ストロンチウム、プルトニウムなどについても、確認できるようにしてください。
(4)母乳について測定を希望する場合にも、身近な場所、例えば保健所などでも測定できるようにして下さい
3.こどもたちの健康状況を把握するために、従来の健康診査体制に加えて、いっそうの充実を行なって下さい
(1)甲状腺のエコーチェックに加えて血液検査での異常のチェック、 精神発達のチェックについて専
門家で検討し必要な検査を実施できるようにしてください。
(2)健診結果への責任ある対応という点で、小児科学会、地域の小児科医会等での集団的対応が図れ
るよう、体制をとってください。
(3)メンタルヘルスに関しても、児童、保護者含めて体制をとってください。
4.こどもたちの健康を守るために、小児医療全体の充実を図って下さい
(1)予防接種など適切な感染症予防態勢の確保
a)被災地域での小児医療体制とくに医師看護師を確保して下さい
b)保育所の確保など乳幼児を育児できる施設、障害のある子どもたちが安全に生活できる環境
を国の責任で確保して下さい
(2)建物の倒壊の危険性のない物理的に安全な遊び場生活空間の確保
(3)中学高校生の就職進学支援
(4)災害遺児への教育生活援助
5. 今後の自然災害などより、放射線被ばくが予想される地域(原子力発電施設周辺のみならず子どもが集中する施設)にヨード剤を適時・的確に配布できる体制を整備してください。
以上