【声明2011.06.17】東日本大震災義援金や東電補償金を理由にした生活保護打ち切りに断固抗議する
2011年6月17日
全日本民主医療機関連合会
会長 藤末 衛
歴史的大惨事となった東日本大震災と福島第一原発事故から3カ月以上が経過しました。いま だに10万人近い被災者・避難民が避難所生活を余儀なくされ、不自由な生活を強いられています。原発事故の収束の見通しが立たないことと正確な情報が公開 されていない現状は、被災者・避難民はもちろんのこと国民に不安と東電や政府に対する不信を広げています。
生活の場を失い、生活の糧を奪われた被災者と避難民は一日も早く「普通の生活」に戻れるように、被災者に寄り添った国の復旧・復興政策の実践を要求し、 当面の生活を維持する震災義援金や東電補償金の速やかな支給を待ち望んでいます。
報道(「福島民友」2011年6月5日付、「毎日新聞」「読売新聞」同年6月16日付等)によると、ようやく支給された義援金や補償金が収入と見なさ れ、生活保護が打ち切られるという事態が、被災地の自治体で生じています。これは被災した社会的弱者にさらなる差別と困難を強いて、生きる意欲を奪うもの で断じて許すことができません。
第一に、「生活保護法による保護の実施要領について」(1961〈昭和36〉年4月1日厚生省発社第123号厚生事務次官通知)にある「災害等によって 損害を受けたことにより臨時的に受ける補償金、保険金、見舞金のうち当該被保護世帯の自立更正のために当てられる額」については、「収入として認定しな い」ことを定めていること、第二に「東日本大震災による被災者の生活保護の取り扱いについて(その3)」(2011〈平成23〉年5月2日付社援保発 0502第2号)は、前述の厚生次官通知を前提に「当該保護世帯の自立更正のために当てられる額」を収入として認定しないこととし、その際の自立更正計画 の策定については「被災者の被災状況や意向を十分に配慮し、一律・機械的な取り扱いとならないように留意する」ことや緊急に配分された義援金については、 当座の生活基盤の回復に充てられることなどから包括的に一定額を自立更正計画に計上してよいことなど、柔軟な取り扱いを生活保護実施機関に求めているこ と、第三に、本年4月13日衆議院厚生労働委員会における赤嶺政賢日本共産党衆議院議員の質問に対する細川律夫厚労大臣の答弁「そういう意味ではこれ(義 援金)について収入にならいということで、処理をされていくものだというふうに思っております」からも、行政の一律・機械的な適用は断じて許されるもので はありません。
全日本民医連は、国に対して被災地自治体が生活保護に関する通知を正しく運用できるように指導を徹底することを求めます。そして被災が原因で、新たな差別と貧困が拡大されることがないように求めます。
国は道州制や自治体の合併・公務員削減の構造改革路線をやめて、欧米諸国なみに自治体職員を増やす財政措置をすること、また、自らも被災しながら奮闘す る自治体職員は、国民の公僕として憲法の精神で住民サービスを実践する本来の役割を果たすことが、1日も早い被災地の復旧・復興につながり、被災者はもち ろん国民の「いのちとくらし」を守る政治が実行される保障であることを提言します。