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声明・見解

声明・見解

【2010.09.18】帝京大学医学部附属病院の多剤耐性アシネトバクターによる院内感染に関して警察の介入に強い危惧を表明するとともに、院内感染対策の充実のために国が責任を果たすことを求めます

2010年9月18日 全日本民医連理事会

 帝京大学医学部附属病院で発生した多剤耐性アシネトバクター感染に関連して、不幸な転帰を辿られた方に心よりお悔やみ申し上げます。また、現在治療中の方におかれましては一刻も早く回復されることをお祈りいたします。

 この件について、警察が業務上過失致死傷罪を視野においた捜査 を行うとの報道がされています。全日本民医連は、警察の介入に強い危惧を表明します。警察による業務上過失致死傷罪の捜査は個人の刑事責任を問うもので、 そもそも院内感染問題の解明とは無縁のものです。警察が介入することで情報公開の妨げになる恐れもあり、医療現場の混乱を助長させるばかりで有害なもの で、断固許すことはできません。

 いま必要なことは原因究明と再発防止であり、そのためには専門家による徹底的な調査がなによりも優先されるべきです。当該病院は、専門家の援助を受けながら、患者の治療と原因究明、院内のシステム改善、職員教育に全力を尽くすべきときです。
 そして、厚労省の責任で、院内感染の教訓を全国の医療機関が共有できるように、状況の把握と迅速かつ正確な情報公開を求めます。

 マスメディアには、いたずらに国民の不安をあおるような報道ではなく、問題解決のために何が必要であるかという視点で、客観的・冷静に事実を発信していただく姿勢を求めます。

 医療が高度化・複雑化する中で、患者は常に院内感染の危険にさ らされています。医療機関側が適切な対応をとったとしても発生は完全には避けられません。現在の知見で到達している標準予防策を日常的に徹底すること、い ざ院内感染が疑われるときには、それぞれの場合に適した対策を速やかに実施し、感染拡大を最小限に止める努力が求められます。
 患者の安全のために医療機関が自発的・積極的に院内感染対策にとりくむことは当然です。しかし、低医療費政策の中で、十分な人員配置をするだけの診療報 酬は認められていないうえに、感染対策のための多額な経費についての保障はきわめて不十分な状況です。全ての医療機関において感染対策を実効性のあるもの にするために、経済的・人的な保障、専門機関の適切な指導など、国が責任を果たすことが重要です。

 民医連では過去にセラチア菌院内感染という事例を経験しています。それを教訓に、全国的に院内感染対策の強化を呼びかけてきました。今回の事例を他人事とせず、引き続き安全な医療をめざして奮闘する決意です。

(PDF版)

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