【2010.06.19】原爆症認定集団訴訟・岡山地裁の判決について
2010年6月19日
全日本民医連被ばく問題委員会
6月16日、岡山地裁は、広島市で1歳時に被爆した原告の子宮体癌を原爆症と認めないという判決を言い渡した。この判決は、これまでの原爆症認定集団訴訟の流れに逆行する、初めての敗訴判決である。
第一の問題点は、被爆者の被曝線量はほとんどなく、人体に有害な影響を与えるとは認められないと断定していることである。爆心地から4.2kmで被爆し ているが、当時は1歳の乳児であり、母親に背負われて市内を移動している。直曝の初期放射線量がごく微量であったとしても、誘導放射線の被曝や放射性残留 物質の吸引による内部被曝などを受けており、1歳児の身体に有害な影響を与えるほど強力ではなかったかどうかは未知であり、憶測でしかありえないことであ る。
第二の問題点は、放射線被曝による急性症状がなかったと断定していることである。それは当時のABCC調査記録に急性症状が記されていなかったことを証 拠としている。しかし当時の記録がどこまで正確であったかは不明確である。今となっては両親から当時の状況を聴きとる条件になく、ABCC調査記録のみで 急性症状を否定することはできない。
第三の問題点は、子宮体癌の発症が好発年齢期であったことから、放射線起因性は考えられないとしていることである。放射線感受性等も考慮すると、1歳の 乳児に対し、ごく低線量の内部被曝が人体にどういう影響を及ぼすかは未知であり、未解明な問題である。小児期被曝の子宮体癌リスクの増加は確認されている 知見がある。科学的根拠がきわめて乏しい旧基準をもとにした初期被曝線量で評価した「原因確率」という非合理的な考え方に固執したものがその背景にあると 言わざるを得ない。
医学的に未知、未解明なところがあるという限界が存在することを前提に、被爆者救済の視点から「総合判断」が行われることを強く望むものである。
全日本民医連被ばく問題委員会は、原爆被爆者が高齢化してきていることを踏まえ、被爆者医療の充実、健康被害への全面的な救済のために、一層努力してい くとともに、引き続き全国の被爆者とともに原爆症認定行政の抜本的な改善のために奮闘する決意である。
以上
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