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声明・見解

声明・見解

【2010.06.10】じん肺法施行規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案等に係る意見

2010年6月10日
全日本民主医療機関連合会
労働者健康問題委員会
委員長 田村昭彦

 じん肺法施行規則及び労働安全衛生規則の一部改訂に関する省令案が示されたので以下の点について問題があると思われるので意見を述べる。

1)改正に関する経過に関して
 今回「じん肺法におけるじん肺健康診断等に関する検討会」の「結果をふまえて」改訂するとされているが、拙速すぎるといわざるを得ない。
 同検討会は2010年4月20日、30日の短期間でわずか2回の開催のみで、報告書をまとめたとされているが、現時点においてもその議事録は公表されて いない。検討会でどの様な議論がなされたかも公表せず、6月12日締め切り、7月1日施行予定でパブリックコメントを求める事に関しては、性急すぎると考 える。
 さらに、じん肺患者を診療・検診している医師が多く参加する呼吸器学会、産業衛生学会での検討をふまえて改訂提案をすべきであったと考える。
 日本産業衛生学会では5月27日、職業性呼吸器疾患研究会において、主任中央じん肺審査医から説明があり若干の意見交換が行われたが、討議は不十分であるといえる。
 性急に結論を出さず、議論を尽くす必要がある。

2)肺機能障害の予測式に日本呼吸器学会(2001年)の予測式を用いることに関して
 (1)従来用いられてきたBaldwinの予測式が日本人でない体格を基にしていること、また臥位での測定結果であることなどから、日本呼吸器学会の予測式のほうが実態に近いものと考える。
 (2)しかし、Baldwinの予測式は、じん肺のみならず身体障害者の等級、障害年金の等級判定等種々の呼吸機能障害の認定に用いられている。予測式 に関するダブルスタンダードによる現場での混乱を避ける上でも、統一的に決定すべきであると考える。

3)2次検査の判定にPaO2を用いることに関して
 従来は著しい呼吸困難の限界値としてAaDO2が示されているだけであり、低酸素高炭酸ガス血症を呈する呼吸不全患者は、計算式上AaDO2が低値となっていた。
 低酸素血症の指標であり、在宅酸素療法導入の指標に用いられている動脈血酸素分圧(PaO2)をフローチャート上明確にすることには賛成する。

4)じん肺健康診断結果証明書等の胸部に関する臨床検査欄に喫煙歴を記載することに関して
 じん肺患者(有所見者)に対する、健康指導として禁煙指導は腹式呼吸訓練、排痰訓練等の呼吸器リハビリ訓練等とともに重要であることは言うまでも無い。
 しかし、今回の改訂提案は「喫煙歴」のみを強調している。
 しかし、地方じん肺審査医が過去喫煙者に対する「その症状は喫煙によるものであるから加療は無意味であると」した意見書に基づき、労働基準監督署が続発 性気管支炎を業務上疾病として認めなかった事例が2006年に労働保険審査会で原処分取り消しの裁決が行われている。「平成13年労第165号(業務上外 関係事件)・取消」(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/shinsa/roudou/06/rousai/txt/01.txt
 今回の改訂が、このような過去喫煙者の続発性気管支炎や肺がん等の合併症の業務上外の判定に恣意的に用いられる可能性が高いといえる。
 健康管理上の療養指導と、業務上外の決定に関しては、明確に区別すべきであると考える。

(PDF版)