【会長声明2008.12.25】生活保護の老齢加算・母子加算廃止を追認する、広島地裁不当判決に抗議する
2008年12月25日
全日本民主医療機関連合会
会長 鈴木 篤
本日、広島地裁民事第3部は、生活保護老齢加算および母子加算の復活を求める原告らの請求 を棄却する、不当判決を言い渡した。加算廃止のためにとりまとめられたと言われている『生活保護制度の在り方についての中間とりまとめ』(2003年12 月16日厚労省専門委員会)を全面的に追認し判決理由の中心にすえた、東京判決よりも後退した判決である。
わたしたち全日本民医連は、憲法25条をないがしろにする今回の判決に対して怒りを込めて抗議する。
わたしたちのソ-シャルワ-カ-委員会が行った『生活保護受給者老齢加算廃止後の生活実態調査』(2008年1月24日)において、老齢加算廃止以降 「月末は食事を一食に減らしている」「服や靴は買えない」「電話代は0円」など、およそ『健康で文化的な生活』とはほど遠い実態が明らかとなった。町会費 が払えず「脱会し、つきあいも断った」など、地域や親族との交流を絶たざるを得ない事態が進行している。「老齢加算が元に戻ったら?」という設問には「親 戚などに香典を包みたい」と本当に切々としたおもいも明らかとなった。
生活保護受給者の母子世帯では、せめて子どもだけは元気に成長して欲しい、というやむにやまれぬ気持ちから訴訟に踏み切った親の勇気が背景にあるが、こ うした原告の願いを踏みにじるこの広島判決は、人間の尊厳を否定する不当なものである。
一般所得額ではなく消費支出額と比較するという厚労省の「基準」は、生活保護を利用する高齢者、母子世帯の方たちの生活実態を無視している。景気が大き く冷え込めば冷え込むほど「最低限の生活」水準は引き下げられ、最後のセーフティネットである生活保護が底抜けとなってしまう。「基準」はあくまで憲法 25条であり、それ以外の基準は決して認められない。
社会保障切り捨て政策は「ワーキングプア」と呼ばれる人たちを大量に生み出し、貧困と格差は急速に拡大している。突如、職と住まいを奪われ路頭に迷わさ れている人たちがあふれている。いまこそ憲法に則した生活保護の真価が問われており、生活扶助基準の引き上げこそ急務である。
来年1月21日には、3番目となる北九州訴訟が結審を迎える。
私たちは、“いのちは平等”の理念のもとで、医療・介護に日夜従事し、患者・医療機関を苦しめている政府の社会保障費抑制政策を改善させる運動に取り組 むものとして、生存権裁判支援と老齢加算、母子加算を復活させるために引き続き粘り強くたたかうものである。
以 上