【会長声明2008.07.01】生存権裁判・東京判決での不当判決に抗議し、引き続く広島地裁などのたたかいを勝利させるために全力を尽くしましょう!
2008年7月1日
全日本民主医療機関連合会
会長 鈴木 篤
6月26日、東京地方裁判所は、原告12人の「老齢加算を元にもどしてほしい」との願いをいずれも退ける、不当な判決を下しました。この判決は、老齢加算 廃止によって、それまでの収入の2割近くを削られ「一日の食事を2回にした」など「健康で文化的な最低限度の生活」をうばわれた、高齢者の生活実態を顧み ない冷酷な内容です。
全日本民医連は、「現代の朝日訴訟」とも言えるこの裁判を一貫して支援してきた立場から、東京地裁の不当判決に対して強く抗議の意を表明します。
判決は、国・厚生労働省が主張してきた「統計」を全面的に採用し、「低所得者の消費水準よ りも高い」ことを理由に老齢加算廃止を正当化しています。格差と貧困が広く深く進行する中で、生活保護基準以下の生活を強いられている高齢者が増加する中 で、そのことを逆手にとって保護基準の引き下げを正当化する事は断じて認められるものではありません。
全日本民医連は、2008年1月24日にソーシャルワーカー部会が「生活保護受給者老齢加 算廃止後の生活実態調査」を発表、「食事や入浴の回数を減らした」「下着も買えない」「冠婚葬祭に全く・あまり参加しない」などの実態を明らかにし世論に 提起しました。この実態調査はこの裁判闘争の中でも重要な証拠として採用され、原告と弁護団を励ましてきましたが、先に述べたように、東京地裁はこうした 現実を直視せず、統計上の数字を優先する判断に終始しています。
本来、司法に求められるべきは、この生存権裁判の中で、日本に蔓延する貧困状態を告発し、セ-フティネットからも外れて生存権を脅かされている国民の「最低限度の生活基準」を日本国憲法に照らして示すことにあります。
この生存権裁判は、小泉内閣以来の「骨太の方針」にもとづく社会保障費の毎年2200億円削減方針の転換を求めるたたかいであり、最低賃金、就学援助、 地方税の非課税基準、国保・介護保険の減免の基準などに連動する、国民生活全般に影響を与えるたたかいです。今回の不当判決は、国の方針転換をせまる規模 まで世論をさらに大きく広げることが必要であることを示しています。私たちは、2004年の学資保険裁判の最高裁での勝利と運動によって、2005年に生 活保護で高校教育費が支給されるようにした経験を持っています。学資保険裁判は、第1審・福岡地裁で敗訴し、高裁で逆転勝利、最高裁で勝利判決が確定しま した。14年間にわたる粘り強い裁判支援の運動によってかちとったものです。
9月には広島地裁で判決があります。年内から来春にかけて、京都、秋田、新潟などで結審・ 判決が予想されます。新潟では、「生活保護受給者老齢加算廃止後の生活実態調査」に関わったソ-シャルワ-カ-が法廷で証言に立つことも予定されていま す。全日本民医連は、各地の裁判勝利をめざし、さらに支援の運動を広げて大きな世論をつくるためにひきつづき全力で奮闘するものです。