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声明・見解

声明・見解

【声明2008.04.22】「後期高齢者医療制度」発足,「診療報酬」改定、「臨床研修制度」改定にあたり全日本民医連の見解を表明します

2008年4月22日
全日本民主医療機関連合会
会長 鈴木 篤

 全日本民医連は今回、「崩壊の危機にある日本の医療・介護制度の再生を~全日本民医連の医 療・介護再生プラン案」を発表しました。日本のGDPは年間約五〇〇兆円で、世界第二位の経済力があります。現在、G7最低のGDP比八%である医療費を 三%(約一五兆円)引き上げて初めてG7平均となり、その財源を医療や介護の充実のために使うことを提起しました。政府が閣議決定で毎年々々、二二〇〇億 円の社会保障費削減政策を実施していること(すでに五年間で三.三兆円の削減となっています)とはまったく逆の方向です。税金の集め方、使い方を国民本位 に変えることでこのプランの実現は十分可能と考えます。「人間の尊厳が大切にされる『新しい日本』へ」、全日本民医連は、その実現めざして国民と医療関係 者との共同のために全力を尽くす決意を表明するものです。

直ちに四月より実施の後期高齢者医療制度の廃止を求める

 政府は国民的な怒りをよそに、七五歳という年齢で医療に差別をもちこむ「後期高齢者医療制度」をこの4月から実施しました。今、七五歳の方は終戦当時一 二歳、戦争の直接体験者であり、戦後の日本を支えてきた世代です。本来なら「長生きしてくれてありがとう」と感謝と尊敬の気持ちが伝わる、安心して暮らせ る医療・福祉の諸制度の整備こそ必要です。ところが、そうした方々から、保険料を徴収し、自己負担を求める、しかもわずかな年金から一方的に天引きする、 という世界に前例がない差別医療制度が実施されました。このような悪法は直ちに中止・撤回させなければなりません。全日本民医連は、野党四党が共同提案し ている後期高齢者廃止法案を強く支持し、改めて多くの国民とともに成立にむけて奮闘する決意を表明します。

 同時に施行された「後期高齢者診療料」算定拒否の動きが各地の医師会はじめ医療関係団体の 中で広がっています。従来の診療が、血液検査や生理検査など「出来高払い」であったのを、「包括制(定額制)」にし、いくら治療しても一人あたり月額六千 円のマルメとなります。医療機関にとっては、治療上必要な検査などを手控えせざるを得なくなり、患者にとっては必要な医療が受けられなくなる事態です。ま さに、差別医療であり、一度このような差別医療が実施さされば、今後、診療報酬改定の度にさらに拡大されることが予測されます。 
 そもそも厚生労働省は、後期高齢者の診療報酬制度について「年齢別に見ると、一番医療費がかかっているのが後期高齢者であるから、この部分の医療費を適 正化していかなければならない。(中略)後期高齢者が亡くなりそうになり、家族が一時間でも、一分でも生かしてほしいと要望して、いろいろな治療がされ る。(中略) 家族の感情から発生した医療費を・・・抑制する仕組みが終末期医療の評価である」(出典:「高齢者の医療の確保に関する法律の解説」厚生労働省高齢者医療 制度施行準備室・室長補佐 土佐和男編著・「法研」発行 P318)とそのねらいをあからさまに語っています。全日本民医連は「後期高齢者診療料を算定しないよう」加盟医療機関に呼びかけました。

政策的意図を持った二〇〇八年度診療報酬改定を見直し、診療報酬引き上げ・再改定を要求する

 医療供給体制の崩壊が進行し社会問題化するなか、国は今回の診療報酬改定を「勤務医対策のために病院に重点配分した」などといっていますが、実際は、今 回の改定で地域の多くの病院が窮地に立たされているのが現状です。「入院時医学管理加算」の算定要件に高いハードルを設定されたために、地域の救急医療を 担ってきた医療機関のほとんどが満たすことが出来なくなりました。中でも、算定要件の一つに「紹介状のない初診患者から選定医療として、実費徴収している こと」が織り込まれました。選定医療とは、保険が利かない「混合診療」の一形態です。診療報酬の施設基準に選定医療をリンクさせる手法は、かつてないこと であり国民皆保険制度の崩壊を招くものです。さらにリハビリ医療に成果主義を導入するなど、全日本民医連は、今回の診療報酬は制度設計に重大な問題がある と考えています。第一線で奮闘している医療機関の経営を更に困難なものとする今回の診療報酬(四回連続マイナス改定=▲七.四三%)を再改定し、大幅な引 き上げ求めて運動を行います。

絶対的医師不足解消に逆行する臨床研修指定制度「改正」に反対する

 この四月より医師法に規定する「臨床研修に関する省令および施行」についての医政局長通知が出され医師臨床研修制度が改正されました。「二年以上受け入 れなしの臨床研修病院の指定取り消し」や、局長通知では、「原則として、当分の間、臨床研修病院の新たな指定や募集定員の増員を行わないこと」、等が盛り 込まれています。絶対的な医師不足、医師養成不足の中で、こうした通知は、臨床研修病院を減らすことになり、医師数を増やし、地域医療を担う医師養成を求 める国民の声、医療関係者の努力に逆行するもので断じて容認できません。直ちに撤回を求めるものです。

以上