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声明・見解

声明・見解

【声明2007.06.15】麻疹流行予防の抜本的対策を求める緊急要望書

厚生労働大臣
柳沢 伯夫 殿

2007 年6月15 日

麻疹流行予防の抜本的対策を求める緊急要望書

全日本民主医療機関連合会
会長 肥田 泰

 今春から東京都をはじめ関東地方から麻疹が集団発生し全国に拡大しています。大学や高校などの学校を単位として、若年者を中心に拡がっているのが今回の 流行の特徴です。多くの大学が休校になり、行事の中止や教育実習への影響なども出ています。連日の麻疹報道で、国民は不安にかられており、検査やワクチン を求める問い合わせが各医療機関に殺到していますが、試薬不足で抗体検査はできず、麻疹ワクチンは品切れ、MRワクチンも小児の定期接種分しか手に入らな い状況で社会的な混乱を招いています。
 1978 年から麻疹生ワクチンが定期接種となりましたが、1回の接種では10 年以上たつと免疫が低下してくることが近年わかってきました。大学生の世代を中心とする今回の麻疹の大流行は、このことが一番の原因と考えられます。さら にMMR ワクチン(麻疹・風疹・流行性耳下腺炎、三種混合生ワクチン)が副作用のため1993 年に中止になり、その時の混乱の影響で、現在の16 歳を中心に麻疹を含むワクチン接種率が低下していたことも背景にあるといわれています。
 先進国のほとんどでは、1980 年代以降、麻疹を含むワクチンの2回以上の接種がおこなわれ、麻疹を過去の病気に変えてきています。日本でも06年度よりMRワクチン2回法が始まりまし たが、対象は今年の小学校1年からであり、この方法ではその効果が現れるのに10年以上かかることになるでしょう。日本では毎年麻疹の小規模な流行と数年 毎の大規模な流行を繰り返しており、このままでは数年後に再び大きな流行が予想され早急に本格的な対策に取り組む必要があります。
 多くの国が麻疹流行防止を重要な政策と位置づけ、予防接種の強化を中心に対策を立てています。ちなみに韓国では、長い間日本と同様の状況が続いていまし たが、2001 年に「麻疹撲滅5カ年計画」を掲げ、一気に数百万人規模でワクチン接種を行い、ついに昨年WHO などから西太平洋地域ではじめて麻疹を撲滅した国と認定されました。わが国は、韓国の先進的な対応から真摯に学ぶ必要があります。
 私たちは、これまでの国の感染症対策・予防接種行政のあり方と自治体も含めた流行発生後の対応の不十分さに対して、麻疹撲滅に向けた抜本的対応を求め、以下の緊急要望をします。

  1. 先進国で常識になっている「麻疹の撲滅」を早期に実現するため、免疫が十分でない世代を対象に緊急の追加ワクチン接種を計画すること。

  2. 麻疹の感染状況を全都道府県で全数把握するシステムを完成させ、その情報を公開すること。

  3. MRワクチンの1期接種と2期接種が、すべての対象児に実施されることを再度周知徹底し、それに必要なワクチンの供給を滞ることなくおこなうこと。

  4. 麻疹ワクチン緊急追加接種の早期実施とその完了のため、国内メーカーに対し麻疹を含むワクチンの増産を指示し、検定作業の迅速化を図ること 供給が不十分な場合は、麻疹を含むワクチンの緊急の輸入措置を検討すること。

  5. 抗体検査の実態を把握し、検査試薬メーカー各社に試薬の緊急増産あるいは輸入措置を指示し、はしかの確定診断による正確な発生数の把握をおこなうこと。

以上