【抗議声明2006.06.14】患者・高齢者の負担を増やし、命の格差を拡大する医療制度改革関連法案の成立強行に強く抗議する
2006年6月14日
全日本民主医療機関連合会
会長 肥田 泰
6月13日、自民・公明与党は、参議院厚生労働委員会で「医療制度改革関連法案」の採決を強行し、14日 の参議院本会議で可決成立させた。4月からの衆議院、5月からの参議院での国会審議の中で多くの問題点が指摘されたにもかかわらず、政府与党による法案の 強行採決・成立は断じて許すことのできないものであり、満身の怒りを込めて抗議するものである。
可決された法案は、極めて異例の21項目にも及ぶ付帯決議が採択されたこと自体、今回の医療改悪法案が多くの欠陥を持つ法案であることを示している。6 月2日、7日の参考人質疑でも与党推薦の参考人から疑問や十分な審議を求める意見が出された。12日の地方公聴会では、「療養病床の廃止・削減は、地域医 療そのものを崩壊させかねない」「療養病床を廃止されても在宅に戻れない人が多いのが現実」との批判が相次いだにもかかわらず、翌日には委員会採決を強行 したことは、自公与党の国民の声を踏みつける立場を示したものである。
可決された法案は、高齢者の窓口負担増・食住費負担・高額療養費の負担引き上げで、高齢者と国民に年間2900億円の負担を押しつけ、他方年間2500 億円もの国庫負担を削減するという国の責任を投げ捨てる「財政優先」の医療改悪である。
高齢者医療制度では、高齢者からも新たな保険料を徴収し、滞納者にはペナルティを科し、別立ての診療報酬による差別医療を実施する方向も示されている。
「社会的入院の解消」を名目にした23万床もの療養病床の廃止・削減は、急性期から慢性期の一貫した地域医療に打撃を与え、多数の介護難民・療養難民を 生み出す危険を抱えている。
さらに「混合診療」の拡大をすすめ、お金のあるなしで必要な医療が制限され医療格差を広げ、公的保険で必要な医療を保障する国民皆保険制度を一層形骸化 させるものである。
また、絶対的に少ない医師・看護師体制を改善することのない「医療の集約化」は、地域医療の偏在化を促進し、必要な医療が地域で受けられない医療格差を 拡大するものであり、安全・安心の医療を求める国民に負担を押しつけ、良い医療を提供したいと願う医療機関と従事者にも大きな負担をもたらすものである。
私たちは、「すべての国民が必要な医療を受けられること、国はその保障を行う義務を持つこと」を規定した憲法25条をゆがめ、世界的にも評価されている 日本の国民皆保険制度を解体させる医療改悪を断じて許すことができない。
しかも「医療改革関連法案」の国会審議のさなか、歳出入一体改革と称して保険免責制の導入・社会保障背番号制導入・市販類似薬品の保険外しなどの新たな 「改革」案が取りざたされ、06骨太方針に盛り込まれようとしている。こうした新たな医療改悪の流れは断じて許されない。
今回の医療制度改悪の実施の中止を求めるとともに、医療改悪による高齢者・患者さんへの実害を軽減させるために地域で運動を進め、国民の命と健康を守る ために地域から共同の運動を全国で大きく広げ、医療改善のために奮闘することを決意する。
以上