【声明2002.04.20】川崎協同病院で起きた気管内チューブ抜去・薬物投与後死亡された事例~許されざる「安楽死」事件について~
4月20日に開催された第3回全日本民医連理事会は以下の談話を発表しました。
川崎協同病院で起きた気管内チューブ抜去・薬物投与後死亡された事例
~許されざる「安楽死」事件について~
2002年4月20日
全日本民医連医療活動部長 水戸部秀利
98年11月、川崎協同病院において、喘息重積発作で心肺停止におちいり、蘇生はしたものの低酸素性脳障 害から意識が回復しない状態となった患者に対し、約2週間後、主治医が気管チューブを抜去し、鎮静剤投与後にさらに筋弛緩剤を注射し、自発呼吸を停止させ 死に至らしめるという衝撃的な事件が発生しました。これは、いかなる事情があったとしても、医学的にも医療倫理上からも許される行為ではありません。
患者の人権を守ることを医療活動の根幹としている私たち民医連の病院において、このような極めて異常な事件が発生したことについて深く憂慮し、お亡くな りになられた患者様のご冥福を祈るとともに遺族の方々に心からお悔やみ申し上げるものです。
いわゆる安楽死については、その是非について、国際的にも国内的にもさまざまな議論があり、国民的合意は形成されていません。判例として、93年4月に 起きた東海大での「安楽死」事件の判決の中で、積極的安楽死が容認される条件として ?耐え難い肉体的苦痛?死期の切迫?苦痛の除去・緩和に他に手段がな い?患者自身の明示された意志表示 の4つの条件が示されました。この4条件に対してもさまざまな意見が出ているのが現状です。今回の事例は、患者の意思 表示を明示するものがないだけでなく、苦痛は他者から見たものであり、わずか2週間の経過の低酸素性脳障害で予後は判定できないことなど、およそこれらの 条件に当てはまらない事例です。
また、今回の事例は、治療方針をめぐる集団的な議論がなされないまま、主治医の独断で実施されています。もし、主治医の治療方針が率直に相談され医師の 集団議論がなされれば、当然このような結果には至らなかったはずです。さらに、当時の病院管理責任者がこのような許されざる「安楽死」の事実を知りなが ら、重要視せずにあいまいにしてしまったことも大きな問題です。病院の医師集団の民主的関係と病院としての医療管理のあり方が問われています。
医療倫理問題については、「患者の人権」を根幹にすえながら、「一人では決めない」「一度で決めない」の原則をしっかりおさえる必要があります。全日本 民医連は、医療倫理について、改めて各院所での議論を呼びかけると同時に、今後、病院管理部や医局と協力しながら、事実経過を徹底的に調査・分析・公開 し、教訓を導き出しながら、二度とこのようなことが私たちの医療の現場で起こらないように取り組みを強める決意です。
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