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民医連事業所のある風景 東京 野田南部診療所 診療所の明かりは街を照らす灯台である

 野田南部診療所は、東葛病院再建を支えた野田地域の人々の要求と運動が実を結んだ結果、1994年に開院しました。初代所長の田中佳博医師が掲げた「いつでも誰でもかかりやすい診療所」の理念は、30年を経て当代である久保所長に受け継がれています。生活習慣病管理、在宅医療、保健予防を三大事業とし、共同組織とともに発展を遂げてきました。2018年には居宅介護支援事業所を設置、医療・介護を利用する人の視点に立ち、ニーズにあったサービスが、切れ目なく重層的に提供できるようになりました。
 一方、本当に困っている人は受診に来ることができません。助けを呼ぶ気力も奪われ、遭難の様相を呈しているともいえます。その場合「受診して下さい」という形式的なやり方では、命を守ることはできません。だからこそ我々は現場にこだわります。直ちに医師や看護師が駆けつけられない場合は、ケアマネジャーや事務が先遣隊として出動し、情報収集を行い、医療を見据えた活動拠点を形成するときもあります。診療所を飛び出し地域に出ると、目を背けたくなることや、逃げ出したくなる現場もあります。そこに理想論はなく、厳しい現実のみ存在します。そんな過酷な現場で、職員の活動と士気を支えたものは、昭和の考えかもしれませんが、使命感にほかなりません。「とにかく自分たちにできる最大限を」そんな思いが、日々職員を現場に向かわせるのです。

地域に立つ灯台のような存在に

 市内では、一世帯に複数の課題が存在し、世帯ごと孤立化している状態など、住民が抱える課題が複雑化・複合化するなかで、従来の支援体制ではケアしきれないケースが発生しています。そこへコロナが加わり、思考が内向的になることでさらに拍車をかけます。
 事態を重く見た診療所では、コロナで中止していたオレンジカフェを再開しました。当日は地域包括支援センターの職員、医師、看護師、ケアマネ、事務など多種多彩な人が集まり、手工芸を取り入れ、お茶を飲みながらおしゃべりを楽しみます。訪問看護や歯科、薬局が併設されている利点を生かし、専門職が相談に乗りながら、必要に応じ医療へつなげることができます。何よりも職員がカフェを主体的に捉え、やりがいを持てていることが、参加者の笑顔につながるのです。受診される患者は増加しており、年齢層は子供から高齢者まで幅広いのが特徴ですが、職員が若手からベテランと層が厚いことも強みです。大学から来ていただいている医師は、本人の希望で外来単位が増えました。夏には新たに2名の医師が配置されます。多様性を認め、やりがいや生きがいを共に創り、高め合う環境が好循環を生み、自然と人が集まってくるのかもしれません。明るく楽しく元気よく、共同組織とともに、地域に立つ灯台のような存在になることが、永遠の目標です。
野田南部診療所 事務長 新井雅之)