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理事会(2023年10月)増田会長あいさつ

【増田会長あいさつ】

 埼玉県議会で10月6日に自民、公明の賛成で委員会採決された「虐待禁止条例改正案」は、児童の養護者の事情などお構いなしに、9歳以下の子をたとえゴミ出しや回覧板回しの間だけでも自宅に残すこと、9歳以下だけの公園遊び、9歳以下だけの集団登下校などを「虐待」として禁止する内容になっています。
 ケアや育児、そして、日本のジェンダーギャップの実態を理解しない議員の発案ですが、こうした議案が委員会を通り本会議にかかりそうになったことに驚きと憤りと情けなさを感じます。「もう第2子は生まない」「埼玉県から引っ越す」といった声など、1000を超える苦情が県庁に届いたといいます。連日多くの市民が県庁に押し寄せ、慌てた自民党は提出後6日で議案を撤回するに至りました。
 ケアの視点で政治を変革する必要性を再確認するとともに、こうした議員が選ばれてしまう現実に強い危機感を覚えます。今年4月9日の埼玉県議会選挙の投票率は34.92%で過去最低を更新し、しかも全国最低です。今年8月6日の埼玉県知事選挙の投票率は過去最低の23.76%で全国知事選の最低記録を更新しました。
 しかし、理不尽を許さない市民運動が悪政にストップをかけ、政治を転換できる可能性を広く共有できたことは特筆に値すると思います。このことは、この数年間での「同性婚」裁判や、9月27日大阪地裁での水俣訴訟判決、そして、第211回国会での悪法強行に対して、全国各地で激しい抗議行動が巻き起こっていることなどと無縁ではないでしょう。今回の埼玉県議会での顛末も、そうした、ケアの重要性や人権・多様性の尊重といった点での国民意識の変化・前進という文脈で捉えることができると思います。

 ロシアによるウクライナ侵略戦争は、10月16日で600日となりました。この日、ゼレンスキー大統領は領土奪還の決意を表明しまいた。一方、プーチン大統領は侵攻を続ける姿勢を鮮明に打ち出しました。双方はこの間、積極的に外交を展開し、新たな分断とも言える状況が拡がっている印象です。今週、北京で開催された「一帯一路フォーラム」に参加した国の顔ぶれにもそのことが表れているように思えます。
 そして、目下の大問題はガザ地区とイスラエルで起こっている破壊と殺し合いです。今回の始まりは10月7日、ハマス側からのロケット弾攻撃でしたが、イスラエル側からの無差別攻撃は異常な程で、既に無辜の市民含めて双方で約5千人の死者が出ています。また、ガザ地区内の病院が攻撃を受け、500人に及ぶ死者が出たと報道されています。双方関与を否定していますが、許し難い暴挙です。民間人を拉致し殺害するハマスも、閉鎖空間に閉じ込めておいて「退去しろ」と指示し「退去できない」人々に無差別攻撃をかけるイスラエル軍も、どちらも異常であり、まさに狂気の沙汰です。ガザ地区をハマスが実効支配する2007年以降、幾度に渡ってハマスによる自爆テロやイスラエル軍からの空爆などが繰り返されてきました。2014年と2021年には大規模は軍事侵攻があり、ガザ地区で計4000人を超える死者が出ています。その多くは民間人と言われています。
 かつてはパレスチナ側だった他のアラブ諸国と、イスラエルがアメリカの仲介で接近してきた経緯や、ハマスのバックにいるイランの存在など、より大きな国の思惑が事態を複雑にしているとも感じます。これ以上、軍事衝突のハードルが下がることは何としても避けなければなりません。中立的立場に立つことが可能な日本の外交力が問われます。一刻も早い停戦、そして、民間人の保護を求めていくことが重要です。

 タガが外れた現政権を終わらせなければ、いのちと人権を大切にする政治は実現できません。人々のいのち、健康に深く関わる医療・介護・福祉に従事する者として、意思表示と行動を起こし、戦争する国づくりと、「医療追い出し、介護とりあげ」の社会保障削減が一体となった政治の中で、引き続き、運動を強化し前進しましょう。