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民医連事業所のある風景 北海道 勤医協小樽診療所

「地域に根ざした診療所」としてこれからも

 「小林多喜二がこよなく愛したまち、たたかう労働者のまち」。1971年、働く人びとのたたかいの歴史が刻まれた小樽に、地元住民による社員の拡大と建設基金のおう盛なとりくみにより勤医協小樽診療所が開院しました。集団検診や健康相談会など、地域に根差した活動を発展させながら、2000年に現在の場所に移転。今も、当時のさまざまな活動を受け継ぎ、そのときどきの情勢や地域、患者の状況を出発点にした医療活動を行っています。
 小樽市は札幌市から北西へ車で約1時間、海に近いにぎわいのある市街地と、至る所にある急な坂道が印象的なまちです。歴史的には炭鉄港、ニシン漁で栄え、現在は小樽運河、北一硝子をはじめとした観光地として国内外から年間700万人が訪れます。人口はピーク時の約半数、高齢化率は40%を超え、この間も、生活に欠かせない路線バスの減便、スーパーの閉店などがすすみ、人口減と高齢化がまちづくりの大きな課題となっています。

医療活動

 地域の保健予防活動として、特定健診、大腸がん検診に力を入れており、「年1回は必ず受けましょう」と医師・看護師が積極的に声掛けを行います。全身管理と早期のがんを見つけるための定期的な検査も医療活動の柱としており、放射線、生理検査の充実をすすめ、年間30件を超えるがんの発見につながっています。
 訪問診療にも積極的にとりくみ、市内全域へ赴きます。冬は雪で車が坂道を登れず、雪をかきわけながら歩いていくこともしばしばあります。高齢の患者に欠かすことができない介護サービスは、併設する勤医協福祉会や地域包括支援センターと連携し、診療と合わせて利用可能なサービスを活用しながら、地域の高齢者が安心して住み続けられるよう、総合的な医療・介護連携を実施しています。
 多職種連携を重視しており、全職員で「気になる患者カンファレンス」を毎週行います。病状はもちろん、患者や家族が抱える不安や願い、通院や服薬、認知症、介護にかかわる問題など、それぞれの視点での発言が飛び交います。

地域連携・地域活動

 市内病院との連携は必須です。精密検査や専門科への紹介を積極的にとりくみ年間400件以上の紹介、市内病院からの逆紹介も大幅に増えています。これまで築いてきた関係性がより密度を増しているといえます。
 診療や訪問行動を通し、地域での見守りや居場所の必要性を実感しています。2016年に共同組織の人たちと居場所づくりのための準備委員会をたちあげ、翌17年に、地域の居場所として「ぽぽろ食堂」をスタートしました。食事だけでなく、体操や趣味など穏やかな時間を過ごし、まさに地域の居場所となっています。コロナ禍では、「ぽぽろ弁当」として宅配形式で地域の見守り活動を継続しており、利用者から大変喜ばれています。
 毎年行う地域訪問行動では、地域で起きている問題を調査します。調査の結果から災害時、避難所への道路が整備されていないことを行政へ訴え、道路の早期改修につなげたこともあります。
 21年に開院50周年を迎えた小樽診療所。地域・患者に起きているさまざまな問題、地域からの要求にアンテナを張り巡らし、「地域に根差した診療所」としてこれからも奮闘します。
小樽診療所 事務長 山本将太)