民医連事業所のある風景 福岡/健和会大手町病院 新病院建設 地域の救急医療を守る
健和会大手町病院は、1984年6月に開設しました(病床数640床、稼働375床、建設コスト128.5億円)。80年代当時、健和会は自らの主体的力量を超えた過大な投資と、その背景に民主的運営の軽視や民医連綱領から逸脱した思想がありました。
92年、それまでの路線を転換し「民医連的再建」にとりくむことを決意、健和会評議員会で決定しました。当初は多額の債務超過状態でしたが、2013年度には22億円を超える累積赤字を解消することができました。これは、中長期経営計画を確立し、その方針にもとづいた活動を全役職員が誠実に実行してきた成果です。同時に、全国の民医連の仲間の支援や共同組織をはじめとする地域住民の期待と支持があったからです。14年度以降も毎年、中長期経営計画を上回る利益と資金を積み上げ、22年3月には健和会大手町病院の新築移転を実現することができました。
地域の人々のよりどころとなる病院に
大手町病院建設は、債務超過解消の翌年14年から新病院建設プロジェクトを立ち上げ、建設基本計画の検討を開始しました。18年度にはあらためて新病院建設委員会を設置し計画と構想を繰り返し練り直しました。19年度、大手町病院第5次中長期経営計画と医療構想を評議員会で決定し着工、22年3月に新病院オープンを果たすことができました。
「新病院建設のコンセプト」は、①日本有数の救急医療を提供する病院、②職員が働きやすい病院、③患者の視点に立った安全・安心な病院、④地域の要求に応えられる開かれた病院、⑤社会的・経済的困難を抱える人々のよりどころとなる病院です。
新病院移転にあたっては、地域医療構想による調整もあり病床数を499床から449床に50床削減しました。ダウンサイジングするなかでも、これまで以上に医療の質、経営の質を高め、地域医療支援病院、災害拠点病院、救急告示病院、臨床研修指定病院、日本DMAT指定医療機関、在宅後方支援病院としての機能と役割を発揮していきます。
北九州一の救急搬送数
大手町病院は、地域医療支援病院として救急医療を中心に地域の急性期医療要求に応えています。救急車受け入れ件数は年間7200件を超え、北九州市内搬入率は14%で開院以来搬送台数No.1です。入院患者数は、救急からの入院が7割を超えています。24時間・365日、重症軽症問わず受け入れ、迅速で的確な医療を提供できるよう各科との連携で診療にあたっています。
今年度の活動の柱のひとつに「絶対に断らない」「まず診る」「最後のよりどころ」の視点を貫くことを掲げていますが、新型コロナウイルス感染者の急拡大と病床使用制限が相まって断らざるを得ない状況が頻発し心を痛めています。新型コロナウイルス感染症とのたたかいと対応では、感染患者を受け入れながら地域の救急医療を守ることの両立に時折限界も感じながら、どこまでやれるのかと葛藤の日々が続いています。感染の波が来るたびに、地域の医師会や関連病院、保健所、消防局、市の感染対策連絡会との情報交換を行うとともに、行政の対応が実態に沿った迅速なものになるよう提案と発信を行ってきました。コロナ禍で困難はありますが、人権と公正の視点で、地域医療を守り、いのちが大切にされる社会の実現をめざして活動していきます。
(健和会大手町病院 事務長 谷口 路代)